家にいながら体の不調を相談できる
AI技術 Ada Health

「ライトを点けて」「エアコンを点けて」などと言うだけで、すでにリンク設定している家電製品を操作できるGoogleのGoogle HomeとAmazonのAlexa。これらのスマートホームデバイスは将来多くの一般家庭において普及していくであろうと予想されている。

双方ともに家の中の家電を操作したり、ニュースを聞いたり、天気やスケジュールを知ることができたりと多彩な用途があるが、体調がすぐれない時に家に居ながらにして体の不調を医師に相談できたら良いと思わないだろうか?

今、それが可能なのだ。

ドイツ・ベルリンを拠点とするAda Health(エイダ・ヘルス)は、Amazonが販売しているAlexaのアプリのひとつだ。ベルリンが本社で、ミュンヘンとロンドンにもオフィスを構えている。

Ada Health
( 画像出典:Ada Health公式HP
https://ada.com/)

2016年後半にローンチしてから、すでに約160万人に利用された実績がある。利用者はAdaを利用することでAIによってAlexaと質疑応答形式で体の不調についてAIに蓄積されている情報を得ることができる。Alexaだけでなく、Apple StoreとGoogle Playからもアプリをダウンロードしてスマホ上でも利用することができる。

Alexaで実際に使用する様子は以下のYoutubeのビデオで確認することができる。
Youtube, Ada + Alexa = hands-free health!

2017年10月にはグローバル投資会社のAccess IndustriesやLen Blavatnik's global investment groupを中心として4,700万ドルの融資を獲得した。この融資で、製品のさらなる開発や新規スタッフの雇用、また米国でのオフィス新設に用いられる予定だ。

( 参考:Techcrunch, Berlin's Ada Health raises $47M to become the Alexa of healthcare https://techcrunch.com/2017/10/31/berlins-ada-health-raises-47m-to-become-the-alexa-of-healthcare/ )

Adaは体の不調を感じた時にチャット形式でAlexaと話し、それでも解決しなければ医師と対話ができるという画期的な技術である。これが普及することによって、外出が困難な人が気軽に医師と相談をすることができる。病院にわざわざ行って順番待ちをしなくても良くなり、また軽度の体調不良に重大な病気の前兆が隠れているという問題も解決することができるかもしれない。

Ada Healthの使い方

Adaを使うには、まず基本的な個人情報を登録する必要がある。名前、年齢、性別の他に身長、体重、また既往症やアレルギーの有無について入力を行う。

症状についてAlexaに向かって口頭で説明することによってAlexaが質問に対して答える形式だ。スマホの場合はテキストチャットを送信することによってAIが返信を行う。

Adaは重篤かつ緊急を要する際の相談先ではないため、あくまでも緊急性を伴わない軽度の症状の場合のみに向いている。

Adaを利用するうえで理解しておくべきこと

以上の点だけ聞くと、病院に行かずにアドバイスが受けられるので便利だと思う人もいるだろう。しかしAdaのデメリットとしては、対面での診察ではないためあくまでも簡易的な情報を得るだけという位置付けだ。この点においてはAdaのホームページにも記載されている。

Can ada provide a medical diagnosis, medical advice or treatment options?

The assessment report provided by Ada is not a medical diagnosis. If you require medical advice the best approach is always to consult your doctor or other health care professional first. Our assessments are developed purely for informative purposes in order to help people better understand their health.

(adaでは医学的診断、医学的アドバイスまたは治療の選択肢を提供していますか?

-Adaが提供しているアセスメント・レポートは医学的診断ではありません。医学的アドバイスが必要であれば、常に医師かヘルスケアのプロフェッショナルにまず相談することが最良の方法です。私たちのアセスメントは純粋に利用者が健康状態をより良く理解するのを助けるため、有益な目的の手段として開発されました。)
( 出典:ada, Frequently asked Questions
https://ada.com/faq/ )

対面の診察であれば重大な病気の前兆として発見されたかもしれない、本人も気づかない症状や状態が見落とされる可能性がある。このあたりの理解を十分にした上で利用することが非常に重要である。一番確実なのは、実際に病院に行くことだ。

どのように医師と連絡を取ることができる?

Adaでは医師と連絡を取ることができるが、どのように医師と連絡を取るのだろうか。医師とのチャットは残念ながら今のところイギリス在住者のみが対象だ。イギリス在住者であれば、世界中どこにいてもこのアプリを用いることができる。

資格を持った医師にAdaの利用者がテキストを送信することで、チャット形式の会話を行うことができる。画像の送信も可能だ。ユーザーの相談内容について医師が診察結果を示すが、これは正式な診断ではなくあくまでもユーザーの相談内容から導き出される簡易的な診断である。状況に応じて医師が次のステップをアドバイスしたり、最寄りの医療機関を紹介してくれる。AdaでのAIによる質疑応答は無料で利用できるが、医師と相談する場合は1回の利用につき18.99ポンドがかかる(2017年11月現在)。

アメリカへの進出は非常に重要

アメリカといえば医療機関で診察や治療を受けるときに莫大な費用がかかってしまう場合が多い。診察の内容や処方される薬にかかる費用は患者側からすると不透明で、費用の予測がつきづらい。アメリカでは日本のように健康保険への加入は義務ではないので、無保険者は診察を受けるたびに医療費を全額負担しなければいけない。これを解決するためにオバマ元大統領が「オバマケア」を掲げたが、トランプ元大統領はこのオバマケアを撤廃することを公約として挙げている。

( 参考:ハフィントンポスト、話題の「オバマケア」何が問題なのか?
http://www.huffingtonpost.jp/mamoru-ichikawa/obama-care-the-problem_b_16462080.html )

また、病院での待ち時間が非常に長いことも問題の一つとしてある。自分の順番が回ってくるまでに数時間待たされるということは珍しくない。このような事情もあり、体の不調に気づいても診察を受けたがらない人もいる。しかし中には診察を受けたほうが良い人もいる。自己判断で医療機関への相談を諦めることは時に自らの命を危険にさらすことになる。

ユーザーの体の不調についてアドバイスをするAdaの技術は、アメリカにおいても需要があるだろう。

Adaの今後

Adaはあくまでも補助的に利用することが肝心だが、利用者が体調の不調を覚えたときに気軽に利用できるところが非常に素晴らしい点だ。現時点では医師とのチャットはイギリス在住者に限定されているが、このサービスを利用できる地域が広がっていけば、多くの人の利便性を高めることにつながるだろう。Adaは実際に利用したユーザーからのフィードバックも受け付けており、より良いプラットフォームになるよう改善している。

Adaの従業員数は今のところ小規模だが、これからスタッフを確保し拡大していく予定だ。これからのAdaの動きに注目だ。

( 参考:Ada Health公式HP
https://ada.com/ )