LPWAN採用デバイスとSaaSプラットフォームで
構築するIoTネットワーク
そんな中で現在注目を集めているのが、低消費電力で広域に届くネットワークであるLPWANだ。その特性からニーズが高まり、数年後にはセルラー回線を上回る普及が見込まれている。今回紹介するのはLPWANを採用デバイス「PLD」とSaaSプラットフォーム「HL2 Panorama」でIoTネットワークを構築したサービスだ。
LPWANを採用したIoTネットワーク
今回紹介するのはLPWANを採用してインターネットとモノをつなぐデバイスの「PLD」と、PLDから受けたデータをダッシュボードで表示・管理するSaaSプラットフォーム「HL2 Panorama」のIoTネットワークだ。設定にさほど手間がかからず独創的なソリューションで、LPWANを通してセンサーから取得したデータをオンラインで可視化し管理することを可能にする。またLPWANデバイスであるPLDはLPWANの規格のSigfox™やLoRaWAN™に対応している。SaaSプラットフォームのHL2 Panoramaは特殊なプロトコルを実行し、複数デバイスのデータを一カ所で集中管理可能だ。またプラットフォームのREST APIのおかげで、使用しているソフトウェアにPLDを統合しやすいことも特徴だ。 このIoTプラットフォームを実現するために、開発側はKickstarterでプロジェクトを立ち上げて支援金を募っている。目標金額は10,000ユーロ(約130万円)で、プロジェクトの終了は2017年10月7日だ。支援金によって贈られるものに差はあるが、180ユーロ(約2.3万円)の支援でPLD本体が贈られる。早いものだと2017年11月に発送を開始するとのことだ。日本にも発送可能だが、発送料はボックスで27ユーロ(約3,000円)、Ultimate Packを注文した場合は53ユーロ(約7,000円)となる。
PLDとは
PLDは数あるIoTの通信方式の中でもLPWANを採用したデバイスだ。LPWANとはLow Power Wide Area Networkの略で、低消費電力で広域をカバーするネットワーク。1秒間に送受信できるデータ量が他の通信方式と比べて小さい代わりに、遠距離通信を可能にしている。通常はデータの通信料が大きい方に需要がありそうだが、様々なIoTデバイスが増えたことで通信方法の選択肢も広がった。IoTデバイスにはリアルタイムで監視できることが重要になるものもあるが、中には1日1回や1月に1回の監視で問題ないものなど常に監視しておく必要がないものも多い。定期的に通信すれば良いデバイスに送受信できるデータ量の多い通信方式を採用すると、運用コストがかかってしまうという課題がある。そこで普及したのが運用コストを抑えて低消費電力で稼働するLPWANだ。広域のネットワークをカバーするため、定期監視でこと足りるIoTデバイスをまとめて管理することにとても役立つ。単3電池で作動するため扱いやすいというメリットもあり、本体は8.5cm x 8.5cm x 5.1cmとポータブルなサイズになっている。 LPWANにはいくつか規格があるが「Sigfox」と「LoRaWAN」に対応しているという。Sigfoxはフランスを拠点にしたSigfox社が提供するIoTプラットフォームだ。日本では2016年11月から京セラコミュニケーションシステムが国内で展開している。LoRaWANは欧州を中心に利用エリアを増やしていて、日本ではSORACOMがLoRaWANに関するサービスを展開している。どちらも低消費電力で広域をカバーし、運用コストを削減できることが特徴だ。
HL2 Panoramaとは
HL2 PanoramaはSaaSプラットフォームを採用している。SaaS(サース)とはパッケージ製品としてソフトウェアを販売するのではなく、インターネットでサービスとして提供することを指す。パッケージでソフトウェアを購入すると必要ない機能までついてくることがあるが、必要な機能やアプリケーションを必要なときに利用する仕組みがSaaSだ。SaaSプラットフォームはデータをインターネット上に保存し、パソコンやスマートフォンなど異なるデバイス上でデータの管理が可能で、異なるユーザーがプラットフォームにアクセスすることで同一データを管理できるといった特徴がある。SaaSプラットフォームを採用したHL2 Panoramaは素早くアプリケーションを開発できることに加えて、直感的に操作できる視覚的なユーザーインターフェイスを採用している。 PDLがIoTデバイスのセンサーなどを通して情報を受け取り、そのデータをHL2 Panoramaで閲覧・管理できる。プラットフォーム上ではデバイスの接続や管理、可視化されたウィジェットを使用してアプリケーション用ダッシュボードの作成、共有または特定製品の定義が可能だ。またHTTPの技術を活用したREST APIを内蔵しているので、シームレスにデータを統合できるとのことだ。 IoTの普及で通信方式も充実してきた。その中で注目されているのが運用コストを抑えた低消費電力・広域カバーのLPWANだ。カスタマイズ可能なプラットフォームと注目されている通信方式を採用したIoTネットワークの登場で、IoTの利用環境がさらに充実していきそうだ。