本当の手のように動く義手「Johnny Arm」
意思でコントロール可能

人間の意志でコントロールできる「Johnny Arm」をご存知だろうか。本当の手のような感覚で動かすことができる画期的な義手で、CNNやトゥデイなど様々なメディアで取り上げられている。


研究・開発から8年経っているものの、いまだに高額で一般的な消費者が購入できる値段に達していない。開発には費用が掛かるため、義手の研究に協力している被験者もテスト後は義手を返す必要があるのが現状だ。そこで開発側はJohnny Armを本当に必要としている人に届けるためにクラウドファンディングサイトでプロジェクトを立ち上げることにした。

マインドコントロールできる義手「Johnny Arm」

本当の手のように動く義手「Johnny Arm」意思でコントロール可能


Johnny Armは外部のコントローラーを必要とせず、人間の意思でコントロールできることを示した画期的な義手だ。意思でコントロールできる義手の開発から8年経っているものの(2017年9月時点)、いまもなお1つの義手に約50万ドル(約5,419万円)かかるなど費用の面で課題が残っている。そこで開発チームとJohnny Armの由来にもなった義手の被験者であるJohnny Mathenyがチームを組んで手頃な価格の義手の制作にとりかかった。プロジェクトが成功すれば、必要としている人のもとに少しでも多くの義手が届くだろう。

Johnny Armが制作された過程は、名前の基にもなっているJohnny Mathenyが大きく関わっている。2008年にJohnnyはガンで左腕を切り落として、意思でコントロールできる義手の最初の被験者となる。この義手はJonhnnyの協力と共に開発が進められて、Johnnyは何度か画期的な義手を持つパイオニアとしてメディアに取り上げられた。しかし研究には費用が掛かるため、Johnnyでさえずっとこの最先端の義手をつけていることは叶わない。テスト期間が終了すれば義手を研究所に返す必要があり、そのたびまた腕を失う気持ちだと語る。開発側はJohnnyや他の義手を必要とする人がこういった発明を常に装着できるよう、クラウドファンディングプロジェクトに乗り出した。そしてJohnnyは被験者でありJohnny Armを体現するストーリーテラーのような存在としてこのチームに参加している。

Johnny Armは現在Indiegogoでプロジェクトを立ち上げて出資を募っている。目標金額は20,000ドル(約216万円)で、プロジェクトの終了は2017年11月4日を予定している。支援によってJohnny Arm本体が受け取れるということはないが、Jonhnny本人と食事ができるという特典がつく支援もある。

最先端のアーム

本当の手のように動く義手「Johnny Arm」意思でコントロール可能


Johnny Armは義手部分と腕にとりつけるバンドのような装置で構成されている。この2つの要素で人間の意思を利用した義手の操作を可能にするが、そのために脳にメスを入れて手術する必要はない。このシステムを実現するためにJohnny以外に21人の被験者がテストに協力したが、どの被験者も良い結果を感じたという。義手に必要な装置を控えめにした点も利用者の利便性を考えた工夫だ。腕よりも大きい装置は利用者にストレスを与える可能性が高い。そのため本体重量は4キロに抑えているという。100のセンサーと17のモーターを搭載して腕の動きを再現。コントロールできる関節は26カ所あるためペットボトルを握って持ち上げるアクションや握手、会話中のボディランゲージなど繊細な動きを再現するのに役立っている。

アームで注目したいのが自由度(DOF:Degree of Freedom)だ。前後の動きや回転といった動きを1つの自由度と考えられるため、この自由度が高いほどさまざまな動きを表現できる。使用する関節によっては自由度が高いほうが快適な義手を体感できるだろう。Johnny Armの指の自由度は親指以外の4本が1DOF、親指が4DOFとなっている。握る動きを再現できるため親指以外は1DOFでも問題ないかと思うが、親指は指の中で重要な役割を果たす。ものを握るときも大きさによって親指の位置が重要になるので、前後左右やひねり運動と様々な動きが必要だ。4DOFにすることで繊細な動きの際現に貢献していると考えられる。また腕の動きに重要な手首も3DOFにしているなど、腕の複雑な動きの再現に貢献している。ペットボトルを持ち上げて飲む動きは、指の関節と腕の力だけではぎこちない動きになってしまう。手首の稼働できる角度に自由度がいくらかあることで、ペットボトルをかたむけるときも本当の腕を使っているように感じ取ることができる。手のひらも2DOFになっているため握手をするときは相手の手をやわらかく包み込むことが可能だ。動かせる関節が多いことで手の表現方法の幅を広げている。腕の関節部分は3DOFなのでボールを持ち上げて投げるということも可能になりそうだ。腕を上に挙げたり回転したりといったアクションもできるだろう。

8年の開発と研究をしてきた実績のあるJohnny Arm。被験者であるJohnnyは8年にわたり意思でコントロールできる義手を体験してきて使用感に一定の効果を感じている。皮膚や骨の信号を感じてコントロールできる義手は多いが、一般に普及するには費用の問題がある。クラウドファンディングの力を借りて、一般に必要としている人に最先端の義手を届けることができるのか注目が集まっている。