電気自動車「Alex eRoadster」
航続距離500kmの実力とは

世界的にエコに対する意識が高まったことで、CO2を排出することなく走行できる電気自動車は消費者の選択肢に挙がることが増えた。電気で動く電気自動車はショッピングモールで充電スタンドを見かけることが増えるなど、着実に身近な製品となっている。


しかし課題となっているのは航続距離だ。ほとんどの電気自動車は充電してから走行できる距離が100km代と長距離を連続して走行することはできない。航続距離が300kmを超える車は数えるほどしかないのが現状だ。今回紹介するのは電気自動車が持つ航続距離の課題を解消した「Alex eRoadster」。航続距離500kmを誇る電気自動車だ。

航続距離500kmの電気自動車「Alex eRoadster」

電気自動車「Alex eRoadster」航続距離500kmの実力とは


Fintos Electric Cars社が開発を進めている「Alex eRoadster」は、航続距離500kmが自慢のスタイリッシュな電気自動車だ。軽量かつ2シートでルーフと共にドアが上部に開く未来型のデザインが魅力となっている。電気自動車市場は全体的な車市場をみるとニッチではあるが、電気自動車を求める人の要望に最大限沿った機能を提供している。その1つが航続距離の問題だ。前述したとおり電気自動車を充電した後に走行できる距離は100km代のものが多く、300km代は数えるほどしかない。通勤で遠距離を往復する人や家族で他県などへ遠出を想定している人にとって航続距離は大きな課題となってくる。途中で充電スタンドによるという案もあるが、最近見かけるようになったとはいえ充電スタンドはどこにでもあるというわけではない。さらに充電方法がガソリンなどとは大きく異なる点も念頭に置かなければならない。ガソリンの給油は数分ですむが、電気自動車の場合は消費電力によって急速充電でも30分かかるということも少なくない。目的地に行く途中で30分もの時間をとられては、その後の予定に大幅な影響を与えるだろう。そこで航続距離が長いことは電気自動車を利用するときの大きなポイントとなり、航続距離500kmを実現したAlex eRoadsterはその点でとても優位に立っている。

Alex eRoadsterは現在、Indiegogoでプロジェクトを立ち上げて出資を募っている。目標金額は100,000ユーロ(約1,321万円)で、プロジェクトの終了は2017年11月8日を予定している。支援する金額によって実際Alex eRoadsterを購入する際にディスカウントを受けられるという。

Alex eRoadsterの仕様

電気自動車「Alex eRoadster」航続距離500kmの実力とは


Alex eRoadsterの主なスペックは次のとおりだ。
・最大速度:140km毎時
・航続距離:500 km
・重量:1,100kg
・車体:炭素繊維
・バッテリー:リチウムイオン電池
・充電時間:急速充電で25~30分
・シート:2シート(ドアとルーフはクラムシェル式に開閉可能)
・価格:65,000ユーロ(約852万円)

Alex eRoadsterは航続距離の長さだけでなくスタイリッシュなデザインと性能も特徴としている。ドアはバック・トゥ・ザ・フューチャーのタイムマシン「デロリアン」のように、上部に開閉できるようになっている。デロリアンと異なるのはルーフもドアと共に上部に開閉できる点だ。これにより車内への出入りが容易になるとIndiegogoのプロジェクトページでアピールされている。電気自動車は他の種類の自動車と比べると種類が少ない。その中でデザイン性の高いモノが出てくると、購入者の選択肢も増えてくるのではないだろうか。

Fintos Electric Carとは

電気自動車「Alex eRoadster」航続距離500kmの実力とは


Alex eRoadsterを開発したFintos Electric Cars社はアイルランドを拠点として、電気自動車を開発するために設立された。Alex eRoadsterはFintos Electric Cars社が開発する初めての電気自動車になるとのことだ。自動車の開発という点で豊富な経験を持ったMike Keane氏がリードエンジニアを務めている。彼は「007 スペクター」に登場した車「Jaguar C-X75」の開発プロジェクトでリードエンジニアを務めた実力者だ。またコンセプトカー「ニッサン ブレードグライダー」のエンジニアチームにも携わっている。ブレードグライダーは最高時速190kmの電気自動車で、ドアが上部に開閉できるなどデザイン性にも優れている。また脇を固めるエンジニアも自動車開発に知見が深い人材だ。電気自動車開発の実力者が満を持して手掛けたのがAlex eRoadsterということになる。

同社は資金調達後、最初のデザインと車体のプロトタイプカーの製作に取り組むという。その後は開発環境を増強してチームメンバーも拡大する。さらに良いものを提供するため、外部コンサルタントの専門知識も活用し、この段階でプロダクトモデルの包括的な計画を進めていく。生産規模を拡大するため投資家の資金調達を念頭に入れていて、ディーラーや小売販売関係の構築に加えてグローバルマーケティングプログラムも進めていくとのことだ。この時点ですでに世界的にAlex eRoadsterを販売していくことを考えていると読み取れる。最終的にはテストを重ねて2020年までに完成品を製造予定だ。


電気自動車の大きな課題だった航続距離を解決に導くAlex eRoadster。課題となっていた部分を解消して電気自動車の普及に貢献しそうだ。航続距離の問題で電気自動車を敬遠していた消費者層に新しいアプローチとなるだろうか。