スパイクと一体化したパワーメーター
「STYX」でバイクの外観を崩さない
パワーメーターとは人がペダルを踏んで自転車に与えた力を表示するデバイス。主に競技者のパワー訓練に使用される。今回紹介する「STYX」は着用して使用するパワーメーター。コンパクトかつ優秀な性能でロードバイクを楽しむ人に効率よく訓練できる環境を提供する。
スパイクにはめ込むパワーメーター「STYX」
STYXは珍しいウェアラブルなパワーメーターで、着用しているスパイク部分にはめ込むことで使用できる。サイクリングシューズにはめ込めばよいので、お気に入りのロードバイクの外観を変える必要がない。しかし通常のパワーメーターと同様にペダルを踏みこむ力を測定してロードバイクに適した技術を分析してくれる。
他のパワーメーターと異なる点は何といってもデザインだ。パワーメーターには大きく分けて「クランク組み込み型」と「ペダル型」と「ハブ型」の3種類がある。クランク組み込み型は、その名のとおりロードバイクのクランク部分にはめ込むパワーメーターだ。ペダル型はロードバイクについているペダルを取り外してはめ込むパワーメーター。ハブ型は後輪のハブ軸に組み込むパワーメーターとなっている。どれも優秀なパワーメーターとなるが、ロードバイクのデザインを崩してしまうのが難点だった。ロードバイクのデザインを気に入って買うライダーが多い中で、外観を崩してしまうのは大きな課題となる。その点、STYXはロードバイクではなくサイクリングシューズにパワーメーターを組み込むのでデザインを崩す心配がない。デザインにこだわる消費者にとってマストなパワーメーターとなるかもしれない。
STYXは現在、Indiegogoでクラウドファンディングプロジェクトを立ち上げて出資を募っている。目標金額は100,000ユーロ（約1,300万円）だ。STYXの希望小売価格は1,050ユーロ（約13万円）だが、早期支援すると565ユーロ（約7.4万円）で本体を入手できる。世界中に発送予定だが、送料は購入価格に含まれていない。
STYXの測定機能
STYXで測定したデータはスマートフォンに転送できる。さらにアスリート向けのソーシャルメディア「Strava」にもデータをアップロード可能だ。
360度さまざまな方向に力が向くため、ペダルを踏むときのエネルギーを測定するのは複雑だ。測定方法は複雑ながら、STYXは簡易化した計算をデータとして報告することはない。最先端の磁力センサと慣性センサでフォースベクトルとペダルの速さを同時に測定する。最先端のセンサを取り入れることで複雑な測定にも対応している。
STYXは両足の力の分散を測定して、360度にわたるペダルサイクルのテクニックと効率性を分析する。測定から得られたデータとAIのアルゴリズムを組み合わせることで、詳細に両足からの動力を伝達できる。この機能では他にも、ケイダンスや右と左のバランス、パワーゾーン、パワーサークルに関するデータも提供可能だ。
ケイデンスとは1分間のクランク回転数のことで、ペダルを回す速さを指す。単位はrpm（回転毎分）だ。ロードバイクには競技をするうえで効率の良い回転数があり、ケイデンスを知ることはテクニックを向上するうえで欠かせない。回転数が高いか低いかによって筋肉の負担が大きく異なる。さらに左右のバランスのデータも重要だ。ロードバイクで走行中はペダリングの左右差を失くす必要がある。ペダリングの左右差がなくなると、ペダルにかかるパワーが均等化。左右のバランスが均等になることでクランクをスムーズに回すことができる。またパワーゾーンは可視化することで自分の鍛えたい領域を選んでトレーニング可能だ。テクニックを磨くために負荷をかけてトレーニングするか、通常のトレーニングでウォーミングアップするか効率的に選択できる。
このようにSTYXは競技に必要なデータを的確に提供することに尽力している。ライダーは提供されたデータを分析してトレーニングに役立てることで、サイクリングテクニックの向上に役立てることができる。利用者の需要を把握して重要なデータを提供するデバイスだ。
人気ペダルと互換性あり
STYXはShimanoのSPD-SLとLookのKéoと互換性がある。SPD-SLはツール・ド・フランスに参加する選手のために作られたペダルで、踏み込む面積が広いためパワー伝達が高いことが特徴だ。クリートのテンションをライダー好みに合わせられるという利点もある。Kéoは多くのプロチームに採用されているペダルで、軽量かつ力強いモデルになっている。回転性と耐久性の高い人気モデルだ。人気ペダルと互換性がある点も、多くのライダーの需要を考えた取り組みになっている。
コンパクトなデザインに豊富な測定機能、人気ペダルとの互換性など、ライダーの需要を考えた新しいパワーメーターが登場した。