災害時にいち早く駆けつける無人航空機「N.O.R.M.」登場
ここ最近、地震に水害と自然災害が続いている。緊急でかけつけることができる場所なら人的被害は抑えられるものの、移動に時間を要す場所だと被害が拡大する恐れがあるのだ。
緊急活動に対応する消防車両「レッドサラマンダー」が活躍したが、「高価なため多くの県に設置できない、そのため遠方から駆けつけることになり時間がかかる」という問題が浮き彫りになった。
レッドサラマンダーのような緊急時対応マシーンの普及が叫ばれている中、注目を集めているのはコンパクトで軽量な無人航空機。緊急時にすぐ現場へ飛ばすことができ、緊急対応やレスキュー到着までの準備を進めることに期待されている。
今回紹介する「N.O.R.M.(ノーム)」は緊急事態対応の無人航空機。ローズハルマン工科大学の学生が開発している新しい緊急対応マシーンだ。
緊急応答無人航空機「N.O.R.M.」とは?
N.O.R.M.は垂直離着陸が可能な無人航空機。緊急事態の対応に最適な作りになっている。十分な搭載量と輸送の妨げにならないコンパクトさ、ほぼ完全な自発的行動を実現。被災者のサポートや、レスキュー到着前の情報伝達が可能だ。これにより生命に関わる状況下で、人命救助に役立つ。
N.O.R.M.は交通状況に関わらず、上空から現場までダイレクトに向かうことが可能。場合によっては車で6分かかるところを、N.O.R.M.なら3分で現場に駆けつけることができるとのことだ。
N.O.R.M.の主な特徴は「素早い配置準備」と「折りたたみ可能な機体」。
まず「素早い配置準備」に関して。オペレーターがN.O.R.M.に行き先を伝えると、必要貨物やバッテリーの準備など出発準備を専用の離発着場が自動で行う。準備が完了したらN.O.R.M.は現場に直行。この準備時間は30秒以内で素早く行われるとのことだ。
次に「折りたたみ可能な機体」。N.O.R.M.自体はそこまでコンパクトではなく、重量や搭載量も他の無人航空機と同じくらいだ。N.O.R.M.は翼を折りたたむことで持ち運び時など、他のマシーンよりもコンパクトに見せている。
翼の長さは141.6インチで最大離陸可能重量は13.5キロ。飛行速度は40~55mph、飛行時間は16~20分。今のところはこのようなスペックが公開されている。
N.O.R.M.の役割
N.O.R.M.は搭載する貨物によって様々なシチュエーションに対応可能。先ほど説明したように自動で必要な搭載物を選ぶので、N.O.R.M.に目的を伝えたら後はまかせるだけで準備をしてすぐに現場へ向かってくれる。緊急事態に慌ててN.O.R.M.の準備をしなくても自動で準備をしてくれるので、レスキュー隊は自身の準備に専念できるというメリットがある。
主に火災・危険物・治療といった主な緊急事態に対応するために独自の搭載物を3つ運んで現場へ向かってくれる。
火災現場に向かうときは高精細度カメラを搭載。このカメラは現場全体を映し、赤外線画像機能を備えている。赤外線画像は最も火の強い場所を可視化して、火災のもとを突き止めることが可能。熱から守るシールドが付いているので高温の場所でも精密機械を守る。
危険物が流れ出たときに最も重要な情報は現場の状況だ。危険物放出の際、N.O.R.M.は現場の状況を察知するセンサーを搭載し、風速や風向き、温度をレスキューに知らせる。また化学検出装置を搭載し、現場の化学濃度を測定することも可能だ。
またN.O.R.M.は医療品を搭載可能。ケガを負った人の近くにいる人が使える除細動器 や止血帯、エピペンといった救命装置を搭載できる。またラジオを運んで、負傷者の近くにいる人がレスキューと連絡をとることを可能にしている。
N.O.R.M.の支援方法
N.O.R.M.を実現するために必要なのは、開発の支援をすること。N.O.R.M.は現在、クラウドファンディングサイト「Indiegogo(インディーゴーゴー)」で資金を募っている。支援は5ドルから最大1,000ドルまで可能。クラウドファンディングの目標は6,000ドルに設定されている
支援する金額によって受け取れる贈り物の内容は変わり、一番低いものでありがとうのメッセージのみだが、最高額の支援になるとN.O.R.M.のプレゼンテーションへ招待を受けることもできる。
気になった方はぜひ支援に参加してみてはいかがだろうか。
インディーゴーゴー「N.O.R.M. the Emergency Response UAV」
開発はローズハルマン工科大学の学生
最初に説明したように、N.O.R.M.を開発したのはローズハルマン工科大学の学生だ。メンバーはMitch Lozier氏とCameron Sickbert氏。もともと特に航空宇宙テクノロジーや無人航空機に情熱を燃やしていたということで、若者の熱意が多くの人に役立つマシーンを生み出すこととなった。
クラウドファンディングといったサイトの登場で、小さなチームでは実現が難しかったアイデアが実現しやすくなっている。社会にとってプラスの影響を与えているように感じる出来事だ。