国内の事業用不動産市場は世界でも有数の規模を誇る。その一方で、デジタル転換(DX)の遅れによる生産性の低下が指摘されているうえに、複数物件を組み合わせた大規模取引の増加や、複雑化する金融スキームの普及を背景に、業界全体で専門人材不足が深刻化している
そうした環境下で不動産取引・運用業務のモダナイズを推進する。それは取引件数の拡大や市場価値の最大化の実現、そして日本の事業用不動産市場がグローバル競争力を維持・強化するために必須だという。三井物産は、生成AIを活用し不動産取引・運用業務の高度化と自動化を実現するプラットフォーム「AIDeeD」を開発した。
昨年からの実証実験で、不動産取引における一連の業務で大幅な効率化を確認した。同実証で得られた知的財産についての特許出願を完了し、来春から本格提供を予定している。「AIDeeD」は国内不動産業界における先駆的なプラットフォームとして、生成AIを活用して物件取得時の書類整理から、保有期間中のプロジェクトマネジメント、売却時のパッケージ資料作成の最適化までの一元管理・運用を具現化する。
アセットマネジメント会社やディベロッパーなどは、これにより設計図書・行政確認書類・各設備の定期点検報告書などの専門文書を自動で命名・分類・整理し、書類の抜け漏れの確認、リスク事項の抽出が容易に行える。グループ会社における先行利用では、従来の手作業によるファイル命名およびフォルダ整理業務の大幅削減が確認できた。約200ファイルある売却予定物件の場合、従来約400分間だった作業の9割超を削減できた。
今回の取り組みは、先進的DX案件へのチャレンジを促進する社内の「戦略的DX支援制度」で採択されて実証実験を行った案件だという。同社は、生成AI技術の社会実装を推進し、「AIDeeD」を通じ、不動産業界が抱える構造的課題の解決に貢献していく構えだ。