
多くの企業でデータ活用が進む。昨今、AIによる分析支援も一般的になりつつある、が、これまでのAIによる分析コメントは課題があった。「誰の視点からの意見か」が不明確で、利用者が自らの立場や目的に照らして解釈し難い――
例えば、同じ売上データでも、経営層が求める中長期的な示唆と、現場担当者が必要とする短期的な対策とで、求める回答は異なるという。NRIは、利用者が設定した役割や性格に基づき、AIが多様な視点からデータを解説する「データ分析におけるAIを活用した多視点分析システム」(特許出願中)を開発した。今後、企業のニーズに合わせ、各種システムに組み込む形での提供を予定している。
同システムは、企業内に蓄積されたデータを分析する際に、画一的なAIの応答ではなく、経営者やアナリストなど異なる立場からの洞察を提供し、特定の視点からの意見を求める利用者に、より適切な示唆やアドバイスを行う。データ活用の高度化と迅速な意思決定を支援する。同社の独自技術により、①役割(ペルソナ)の選択機能、②性格のチューニング機能、③自然言語による対話型の深掘り分析を実現している。
①では、利用者は「経営層」「経営アナリスト」「ステークホルダー」といった役割を選択。するとAIがその立場になりきってデータを分析する。各役割の思考様式を模倣するプロンプト技術(指示文設計・活用技術)と、各役割に応じた補足情報DBとの組合わせにより、通常の生成AIのプロンプトよりも、より一貫した回答を得られる。補足情報には、社内文書や議事録なども取り込める。
分析ダッシュボード型の独立アプリとして提供できる同システムは、既存情報分析システムにモジュールとして追加導入できるよう設計されているという。同社はこれからも、AIなど先端技術の研究開発と社会実装を通じて、データに基づいた業務プロセスの高度化と企業価値向上に貢献していく考えだ。