医療DX、"卵子の数と質"を問診と採血のみで簡単AI予測

ライフスタイルの変化により、加齢に関連した不妊症の増加が顕著となっている。その大きな要因の一つとして卵巣機能の低下が考えられているが、現在のところ、適切な対策を講じるための、卵巣機能を簡便かつ正確に評価する手段が限られていて、これが大きな課題となっている。医療現場では――

卵子の数の評価に超音波検査や抗ミュラー管ホルモン(AMH)値の測定が用いられているものの、まだ精度向上の余地がある。加えて、卵子の質(卵子が受精し妊娠・出産につながる能力)については評価が難しく、年齢や数的指標からの類推に頼っている状況だという。東京大学大学院医学系研究科産婦人科学講座、東大病院女性外科サイオステクノロジーの研究グループは、卵巣機能を予測するAI(機械学習)モデルを開発した。

同モデルの学習に必要なデータ収集を実施。東大病院と関連施設から、卵巣機能など詳細なデータが揃っているART(生殖補助医療)治療患者の医療情報と、診療過程で得られた残余血清を収集した。同血清からは卵巣機能に影響を及ぼす可能性のある各種関連物質を研究室で測定した。そして、大規模で複雑なデータを取り扱うことが得意なAIを活用して、上記収集データから複数の予測モデルを構築した。

さらに有用な指標を選別し対象項目を絞り込んで、より高精度かつ実用的なモデルの開発を試みた。結果、日常生活では見えにくい卵巣機能を問診と採血のみで簡単に予測できるAIモデルを完成した。卵巣機能は「卵子の数と質」で表現され、同モデルは、年齢や月経周期などの聞き取り内容と、少量の採血からわかる項目を入力すると、従来法より高い精度で卵子の数を予測できる。予測手法が未確立だった卵子の質についても予測可能とした。

プレコンセプションケア、不妊治療の個別化・最適化への活用が期待される。今回の成果は、Journal of Ovarian Researchに掲載された。