倒木や落枝による事故が増加している。人命に関わる事故も発生し大きな社会問題となっている日本の街路樹では、2018年~22年に年平均約5,200本、1日平均14本の倒木が確認されている。
上記状況が国交省の全国調査結果(PDF) に示されている。事故を防ぐには、樹木の健全性を保つ定期的な診断が必須だが、近年、老化や病気などを診る樹木医ら専門家の不足、人件費の高騰などによって、十分な管理体制の維持が難しくなりつつあり、樹木管理の効率化が強く求められているという。
三井住友建設は、倒木や落枝による事故防止に寄与する樹木管理支援事業の展開に向けて、人工知能を活用した樹木診断システム「tree AI ™」の開発に着手し、今月11日には、茨城県と覚書を締結し同県内の街路樹を対象にAI診断システムの実証実験を開始した。これにより、診断本数が多く手間の掛かる初期診断をAIに委ね、専門的な知見がなくても危険木のスクリーニングができるようになる。より多くの樹木診断が可能となる。
樹木医も、一層専門性の高い精密診断に注力できるメリットを享受する。同システムを活用し、①初期診断として樹木の撮像をAI解析して危険木をスクリーニング、②危険木判定時には、樹木医ら専門家が精密診断、③異常が確認された場合、手入れや伐採などの適切な処置、③デジタル管理台帳で、樹木の位置、診断・手入れの履歴などの情報をリアルタイム管理、正確なデータに基づいた最適な管理計画を立案といった手順で樹木管理する。
限られた維持管理予算・工数の中で、より効率的な樹木診断が実施でき、危険木の早期発見に繋がり、倒木などの事故を未然に防げる。AIの診断結果と専門家の目視結果との比較により、システムの精度や有効性を検証する、今回の実証試験結果を踏まえ、より実用的なシステム開発等を行う。同社は、人と木が共存できる安心安全なまちづくりを目指していく構えだ。