量子コンピューティングで出荷計画時間を大幅減、積載率アップも達成

その工場では国内向けに年間約4万台のフォークリフトを生産し、全国へ出荷している。顧客オーダーにもとづく当該製品は、車両の仕様が多岐にわたり、重量や形状が一台一台異なる。そのため、複数台の輸送トラックへの荷積みと配車は、同時に最適化する際に、組合わせが約一兆通りとなり――

従来技術では自動化が困難である、出荷計画業務は担当者の負担となっていた。複雑な計画立案を精度高く実施するためには、実践での経験が必要なため、担当者の人材育成も課題になっていたという。豊田自動織機向けに、NECは、自社の量子コンピューティング技術を活用したフォークリフト出荷時の荷積みと配送先の組合わせ(配車)を最適化するシステムを築き、今年10月に同顧客の高浜工場で本格稼働させた。

同顧客および豊田自動織機ITソリューションズと共同で構築した。同システムでは、トラックの最大積載重量、荷台サイズ、配送先など、約100項目にわたる制約条件を加味した組合せ最適化問題を解くアプリケーションを開発した。今回の仕組みを、高浜工場において、出荷計画業務に用いたところ、熟練者の約1/6以下の時間で計画を立案できた。と同時に積載率向上を実現した。これらの成果は、輸送費の低減、CO2削減にも寄与する――。

量子コンピュータのコアである「量子ビット」の製造に世界で初めて成功した企業として、現在も量子コンピュータの実用化に向けて、各種研究活動を進めている。組合せ最適化問題を解けるシミュレ―テッドアニーリングマシンも開発。これらの量子コンピューティング技術とAI・数理最適化技術などを活用し、顧客の業務最適化に向け、実課題への適用を進めているという。

NECは今後も、さまざまな分野で社会が抱える最適化問題を検討段階から実装まで顧客に寄り添い、実務課題を解決できる実践的なソリューションサービスを提供していく構えだ。