連続溶融亜鉛めっきラインや連続焼鈍ラインにおいて、鋼板の引張り強度や伸びなどの機械特性を調整するために鋼板を加熱する際に用いる。ラジアントチューブバーナーは、燃料と空気が金属製のチューブ内で燃焼反応し――
燃焼熱によって加熱されたチューブの輻射熱により鋼板を加熱する仕組みであり、鋼板表面を高品質に保持可能なため、自社の焼鈍炉でも数多く採用されている。一方で、それは狭い空間で燃焼反応が生じ高温になりやすく、チューブ変形の抑制ならびに低NOxと高熱効率の両立が求められていたという。
JFEスチールは、仮想空間上に構築したデジタルツイン技術の活用により、革新的ラジアントチューブバーナーの短期開発に成功した。当該ラジアントチューブバーナーを東日本製鉄所(千葉地区)冷延工場で長期運用したところ、従来のラジアントチューブとの比較で6倍程度の長寿命効果が見込まれるとともに、低NOx化、省エネ化に寄与していることが明らかになった。
試験炉の燃焼実験から得られた試験データと物理モデルを元に、仮想空間上に試験炉を忠実に再現したデジタルツインを構築し、ラジアントチューブの炉内支持構造、チューブ形状、バーナー周り、伝熱促進体、熱交換器を独自に開発した。その結果、変形速度1/6、NOx発生量30%低減、3%の省エネ化といった革新的ラジアントチューブバーナーの開発に至り、従来の約半分の期間での操業運用を実現した。
デジタルツインで得られた情報を制御システムに適用することで、一部の熟練のオペレーターの操業と同等またはそれ以上の高効率な操業が常時可能となる。デジタルツイン技術を設備設計プロセスに組み込み、現実世界では把握しえない設備内部の状態を仮想空間で可視化することで、生産プロセスの効率的な開発と運用に革新的な効果をもたらすという。同社の今回の成果は、日本伝熱学会の2023年度日本伝熱学会・技術賞を受賞した。