循環型エネルギーとIoTでエビ養殖を自然環境保護かつ効率的に

ベトナムにおいてエビ養殖は主要産業だ。一方で、電力供給不足、養殖汚泥による周辺土壌・地下水の汚染、温室効果ガスの発生、養殖池での病気蔓延など複合的な課題を抱えてもいる。ゆえにエビの大量死や周辺地域の環境汚染を低減する低環境負荷型システムへの転換が急がれているという。

裕幸計装九州大学工学院大学IIJは、河や海に垂れ流されていたエビ養殖汚泥を活用し、温室効果ガス削減や電力の安定供給などをめざす『省エネ型エビ養殖統合システム』を開発した。その実証運転をベトナム南部ティエンザン省で7月~来年6月に実施する。単位養殖池(千平米)あたり年間約40t-CO₂の削減、およびエビ生残率85%(年平均57%)といった成果を見込んでいる。

同システムは、養殖汚泥とレモングラスの加工廃棄物を混合・発酵させ、生成されたバイオガスを固体酸化物形燃料電池(SOFC)に供給して発電する「循環型エネルギー創出ユニット」と、IoT技術基盤にて養殖環境とエビの育成状況との相関性を分析――エビにとって最適な環境を見出し、養殖効率向上に資する「エビ増産ユニット」とで構成されている。

これを導入した場合、最大90%/収穫重量のCO₂排出量削減が期待できる。養殖効率アップによる売上増加や、汚泥の有効活用による環境改善など、エビ養殖を取り巻く課題解決への大いなる寄与にも繋がる。メコンデルタ地域だけでも約5万社ある。同国における大幅な経済効果もさることながら、世界有数のエビ消費国日本にとって、一層高品質なエビの養殖・流通による成果還元も望める。

NEDO「脱炭素化・エネルギー転換に資する我が国技術の国際実証事業」のもとで実施する。同システムの実証は、MRIをはじめ日越の研究機関・企業の技術支援を受け実施されるものであり、両国間の産学連携を通じ、日本の先進技術がベトナムの主要産業に大きく貢献することが期待されているという。