情報通信
メタバースで視線を見える化、何気ないコミュニケーションが偶発する
意外なものを偶然発見することやその能力を指す「セレンディピティ」は、課題解決のヒントやイノベーションの創出に必須とされる。何気ない交流からよく生じる。デジタル空間における当該事象・能力の欠如はかねて問題視され、コロナ禍を経て同空間でのコミュニケーションが急増した結果、深刻さを増した。
上記問題が解決されなければ、特定の考え方や価値観が増幅される閉鎖的な状況を招き、社会や文化の分断や衰退につながる可能性もある。これからのデジタル空間にはインフォーマルコミュニケーションを誘発する仕組みが必要だという。東京都市大学、TIS、岡山理科大学、工学院大学は、3次元バーチャル空間/メタバースでの視線の可視化により、不可視時の3倍以上の確率でコミュニケーションを誘発する技術を開発した。
3種類の視線可視化手法――視線の送り手のいる方向を指すArrow、送り手のいる方から流れてくるBubble、送り手のミニチュア分身Miniavatar――を開発。これら3手法は、視線を可視化しない場合と比べて偶発的なコミュニケーションを有意に誘発すること、特にBubbleはArrowよりも会話を伴う偶発的なコミュニケーションを有意に誘発することをユーザー(一般募集した20~49歳の男女96人の参加者)実験により実証した。
サクラ(偽参加者)を用いた、他者との交流の意思を必ずしも持たない状況下での偶発的なコミュニケーションの客観的かつ定量的評価手法も構築した。今後、上記可視化手法の組み込まれたソーシャルVRプラットフォームを開発し、オープンソースソフトウェアとして公開する予定である。各種VR・ARコミュニケーションサービスへの可視化手法の適用や、産学などでのVR・ARコミュニケーション支援に関する研究開発の進展が期待されるという。
4者(ソーシャルVR研究ユニット)の研究成果は、科学誌ACM TOCHIに掲載された。