AIと人が協働し次世代エネルギー製造の低コスト化・大規模化を加速

カーボンニュートラル社会の実現、エコな水素製造装置の大量導入が求められている。現在、水電解装置の特性は高価で希少な白金族元素型の電極触媒材料に依存し、その汎用元素化による水素製造が必須となっている。水電解による水素発生には酸素発生反応(OER)が伴い――

同反応の速度を高めるために白金族元素が不可欠と考えられていた。そこで、OER電極触媒の低コスト化・大規模化に向け、多元系材料が注目されているけれど、元素の組合せや化学組成は無限にあり、最適な材料組成発見には膨大なコスト、時間、人的資源を要していたという。NIMSは、所望の特性を持つ材料をAIと人との連携により短期間で発見する手法を開発した。

同手法は白金族元素を用いない新規電極材料の発見を導き、次世代エネルギー"エコな水素"製造の低コスト化と大規模導入を加速する。研究チームはデータ数での予測手法を進化させ、所望特性を示すものを正確に予測するAIを開発。同AIと人が協働し、3000個程度の候補から1カ月(従来手法:6カ月)でOER電極触媒材料に適したものを発見した。

Mn、Fe、Ni、Zn、Agなど比較的安価かつ豊富な元素で合成できる。条件によってはこれまでのOER電極触媒材料の中で最もOER活性が高いルテニウム(Ru)酸化物を超える電気化学特性を有していた。今回発見した新規材料の中で最も地殻存在量が少ないAgにしても、Ruの100倍近くも多く存在していて、水電解装置の大量生産を実現する電極触媒材料だと考えられる。

今後、様々な電気化学デバイスの高効率化を実現する新材料開発を"AIと人との連携"で加速し、カーボンニュートラル向け実用技術開発につなげるという。JST未来社会創造事業領域「実験自動化技術とデータ科学の連携による海水電解材料のハイスループット探索」の一環として行われた。研究成果はACS Cent. Sci.に掲載された。