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漁業DX、"丹後とり貝"養殖をデータ駆動型でかつスマートにする
その課題は海洋環境の変化による出荷量のバラツキだ。養殖はアンスラサイト(石炭の一種)を敷いたコンテナに稚貝を入れ、海中に吊るし約1年かけて丁寧に育成する。「京のブランド産品」に認証されている「丹後とり貝」、これを育てる環境すなわち水温、溶存酸素、塩分、クロロフィルは――
水深4~7m位が好適とされている。が、気候変動に伴い水温や水質が変化し、植物プランクトン量も変化――現在の海洋環境は養殖技術開発当初と異なると想定される。夏期に漁業環境は悪化しがちで、高水温、低塩分、貧酸素の環境下では突然死が発生しやすいとされるが、環境と斃死率など育成状況の相関データがない。丹後とり貝の安定供給は健康状態を把握する指標と、水質環境データを取得・分析し実情を掴むことが必要だという。
舞鶴市とJF京都舞鶴とり貝組合、KDDI、KDDIアジャイル開発センターは、水産資源の安定供給および養殖環境構築の手引化を目標に、IoTを活用した丹後とり貝のスマート漁業事業の実証を7月より舞鶴湾で行っている。海洋環境を見える化し、データ分析によって養殖に最適な環境を導き出す。
海洋環境データの取得では、稚貝の入ったコンテナを水深3m、6m、9m、11m毎に沈め、海中へ設置した昇降機付のIoTセンサーで水深毎の水温、溶存酸素、クロロフィル、塩分などの情報を1時間毎に収集しクラウドへ保存する。約20日に一度、水深毎のコンテナ内のとり貝の殻長、斃死などの成育状況を取得し、これもクラウドに蓄積する。
データの分析では、取得した環境データと育成結果の関連性を分析することで、「斃死率が低く成長率の高い環境」などデータに基づいた最適な養殖環境の把握が可能になるという。4者は今後、分析データをもとに養殖手法をマニュアル化し、丹後とり貝の最適な環境を養殖事業者へ共有することで、養殖業の効率化と、舞鶴市全体での養殖の増産をめざす。