超低遅延・多数同時接続も可能な5G仮想化基地局を低コストで実現へ

各種産業のDXを5G通信網が支える。いずれ5Gのフル規格「ポスト5G」へ移行することが、ビジネスの発展や市場の活性化、エンドユーザーの利便性向上に重要である。従来の5G基地局は専用機器によるハードウェア基地局だったが――

昨今、通信事業者の間では基地局の導入コスト抑制や消費電力低減を目的に、基地局機能をソフトウェア化し動作させる仮想化基地局を導入する動きが広がっている。ポスト5G化に向けては、超高速通信に加えて、超低遅延、多数同時接続といった異なる特長を生かしたサービスを「必要な場所」「必要な時」に提供するため、多様なユースケースに対応できる柔軟性を基地局上で実現することが求められるという。

NEDO「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」において、富士通は、基地局の演算リソースをソフトウェア基盤上で柔軟に配置・制御してポスト5Gに対応できる仮想化基地局の高度化技術を開発した。現在普及している5Gからポスト5Gへのシームレスな通信インフラ移行が可能になるという。同技術を適用した仮想化基地局は、従来型のハードウェア基地局よりもスループット性能が30%向上、同時接続端末数が3倍増しとなった。

ネットワーク全体での基地局設置数の削減にもつながり、初期投資から運用までの費用もハードウェア基地局との比較で30%以上削減できることを確認した。汎用サーバのハードウェアリソースを基地局処理へ動的に割り当て可能にしたことで、プライベート5G向けの小規模システムから、通信事業者が提供するパブリック5G向けの大規模ネットワークまでシステムを柔軟に構成できる仮想化基地局を実現した。

富士通は、ローカル/プライベート5G仮想化基地局にも同技術を適用し、ポスト5G通信網へのスムーズな移行に貢献する。一方NEDOは、これからも日本のポスト5G情報通信システムの開発・製造基盤強化を目指していくという。