太陽のしくみ核融合、炉内プラズマの乱流と熱輸送を単純計算で予測

「小さな太陽」であり未来のエネルギー源として大いに期待されている。核融合炉では、磁場で高温のプラズマ(電子と原子核が分離して激しく運動しているガス状物質)を閉じ込めるが、そんなプラズマ中にも、大小様々な渦が複雑に運動している"乱流"状態の発生する場合がある――

乱流はプラズマの熱の流れ(熱輸送)を引き起こす。プラズマの揺らぎや乱流による熱輸送を高精度かつ高速に計算することは、核融合炉の性能予測と制御に関わる物理メカニズムの解明で重要な課題だという。NIFSSOKENDAIの研究グループは、スパコン(プラズマシミュレータ雷神JFRS-1)を用いた多数の大規模数値計算から得られた乱流・熱輸送データを元に、数理最適化手法を応用し、高精度の数理モデルを構築することに成功した。

JSTさきがけ新しい流体科学研究領域における研究課題や、QSTトカマク炉心プラズマ共同研究文科省科研費日本学術振興会PLADySによる支援を受け、新たに構築した高速かつ高精度の上記数理モデルは、核融合プラズマの乱流研究を大きく加速させる。これを駆使することで、核融合プラズマの乱流と熱輸送を、単純化された小規模な数値計算のみで予測可能となり、従来の大規模数値計算より約1500倍速い計算が実現される。

核融合プラズマ全域の解析のために行われている、乱流の数理モデルと乱流以外の現象の数値計算を組み合わせる統合シミュレーション研究も進展させる。同モデルによって乱流による熱輸送を抑制するメカニズムの解明が進み、革新的な核融合炉を目指す研究にも大きく貢献するだろう。

"単純"から"複雑"を予測する挑戦は、複雑な構造や運動を扱う諸科学・テクノロジーでの共通課題だ。今後は上記研究で培われたモデル化の手法を複雑流動の研究へも展開していくという。研究グループの成果をまとめた論文はサイエンティフィック・リポーツに掲載された。