熱帯の島国でラストワンマイル物流、高品質コールドチェーンの普及も

コロナ禍によりEC量が増加した。熱帯性気候帯に7千超の島々を抱えるフィリピン共和国では、首都マニラのあるルソン島やその次に大きなミンダナオ島、大都市セブのあるビサヤ諸島などで宅配需要が高まり、物流課題が顕在化している。

配送事業者の多くは配送指示をアナログ(紙・電話等)管理し、配送状況把握が難しく、荷主の問合せに即応できない。冷蔵・冷凍車による配送が高価なため、コールドチェーンがほとんど普及していない。巣ごもり消費等を背景に"モノ"の配送ドライバーが不足する一方、トライシクル(タクシー)ドライバーの収入機会が失われている。マニラ首都圏および近郊にて――

DNPは今年2月、物流の最終拠点からエンドユーザーの手元までの「ラストワンマイル」の低温度帯配送「コールドチェーン」を対象に、同社が開発したデジタル配送管理システム(関連記事)と、冷蔵・冷凍車に比べて低コストで導入可能な「DNP多機能断熱ボックス」を掛け合わせた物流サービスの実現性、市場受容性を実証する事業を行った(紹介動画:YouTube)。

同実証事業は、国交省の「デジタル技術を活用した物流最適化に資するソリューションの海外展開支援に係る調査検討業務」として実施したもので、①「デジタル配送管理システム」による配送状況の可視化、②「DNP多機能断熱ボックス」を活用したコールドチェーン構築、③トライシクルドライバー等のリスキリングによる雇用創出を検証した。

配送管理の効率化、任意の温度帯を長時間保った配送および配送業未経験ドライバーの業務への適応といった一定の成果が得られた。これを踏まえ、将来的には食品や医療品等を安全に最終目的地まで届けられる安心かつ高品質なコールドチェーンの普及・浸透と、当該市場における新たな雇用創出につなげる。同社は今後、市場適応性などを検討しながら東南アジア各国(ベトナム、インドネシア)への水平展開を目指す。