港湾クレーンをドローンで"目視点検"、将来の定量評価技術へ

その自治体ではIT・ロボティクスを活用した地域課題の解決や産業の振興などを目指している。一方、各種構造物の点検を行う企業は、人手不足や技能・技術伝承――産業界を覆う深刻な課題を先端技術で解決しようとしている。

今月11日、三井E&Sマシナリーゼンリンデータコムは、大分県の協力のもと、三井E&Sマシナリー玉野機械工場(おかやま)にいる点検作業者が、ドローンを遠隔操作し、約250km離れた大分港大在コンテナターミナル内の港湾クレーンを点検する実証実験を行い、構造物の遠隔間接目視点検技術を確立したことを発表した。これにより、ベテラン技術者は現地に出向く必要がなくなり、点検作業自体のさらなる効率化・省人化が期待できる。

ドローンの飛行と点検箇所の撮影は全自動で、操縦スキルに依存しない安定撮影が可能だという。今回の実験では、DJI JAPANの最新型産業用ドローン「Matrice 300 RTK」とカメラ「Zenmuse H20」を使用。飛行制御にはソフトバンクの高精度測位サービス「ichimill」を利用した。結果、映像伝送遅延の課題には操作レスポンス最速0.46秒で答え、LTE回線接続断の際でもドローンはホバリング体勢を維持し、復旧後に点検を継続できた。

ドローンによる遠隔間接目視点検が運用可能なレベルにあることを確認した。自動撮影画像は、三井E&Sマシナリーの「CARMS」の機能の1つ「クレーン構造物点検管理」で点検結果とともにクラウドに蓄積することで、効率的な運用管理が可能になる。同機能は三井E&Sシステム技研と共同開発したもので、三井E&Sマシナリーでは現在、画像解析により自動で発錆の有無や錆の定量評価が可能になる技術も、開発を進めているという。

なお、大分県は、大分コンビナート企業協議会大分県ドローン協議会などとも連携し、引き続き上記取り組みの推進を支援していく構えだ。