EVのバッテリ管理システム、開発期間を短縮し安全規格準拠を容易に

日本政府は4年前、「2050年までに世界に供給する日本車について世界最高水準の環境性能を実現する」と宣言した。その根拠は各メーカーの技術力だろうけれど、国内の電気自動車(EV)普及は近ごろ、欧米中よりもかなり遅れている。

今月2日、ルネサスは、EVのバッテリマネジメントシステム"BMS"向けに、AUTOSAR準拠CDD(複合デバイスドライバ)の提供を開始した。これを車載用マイコン「RH850/P1M」に搭載し、リチウムイオンバッテリ管理IC「ISL78714」と組み合わせると、BMSの性能を最大化し、開発期間を短縮できるという。CDDは同社のBMSリファレンスデザイン・ハードウェアキットに対応する。

RH850マイコン用のMCALソフトウェアに載せる。CDDは、バッテリ管理の基本要素であり、バッテリセルの電圧と温度の測定値を収集し、ISL78714のセルバランシング機能を制御する。パラメータ設定によりBMS内のセル数や、当該セルのデータ収集の頻度を指定可能。シンプルかつフル機能のAPIが用意されていて、ユーザアプリで上記測定値をリアルタイム受信できる。

所要インタフェースとプロトコル管理はCDDソフトウェアに組み込まれていて、MCALモジュールの低レベルSPI、GPIOおよび汎用タイマ(GPT)ドライバ上で動作する。同ソフトウェアは設計を簡素化する実用的なアーキテクチャを提供――、ユーザは独自アプリの開発に注力できる。CDDならびにMCALモジュールは、自動車機能安全規格ISO26262ーASILで最も厳しい"D"の開発プロセスに準拠。RH850/P1MもASIL Dをサポートしている。

ユーザがASIL D準拠ソフトウェアを開発する際、CDDをサンプルとすれば早期開発が実現できる。設計支援を希望するユーザは、同社のパートナTATA Elxsiと契約し、システム開発を行えるという。