造影剤を使わないCT画像からも、AIにより膵臓がんの早期発見へ

体の最深部にある膵臓のがんは発見が難しい。自覚症状に乏しく自発的な検査に至りにくい。診断から5年後の生存率が他のがんより極端に低く、あらゆるがんの中で最も進行が早いとされている。

がん情報サービスの最新資料によるとその5年生存率は約11%。腹部超音波検査などの比較的簡易な画像検査では膵臓全体の描出が困難で、がんの疑いがある部位の見極めが難しいことも課題である。膵臓がん患者の救命においては、初期段階で膵臓がんを発見できるように検査機会を増やし、微小な疑いもくまなく画像所見として指摘できる技術の確立が急務になっているという。

総合南東北病院富士通は、富士通Japanエフコムとともに、より早期の膵臓がんの発見に向けて、造影剤を用いないCT(コンピューター断層撮影)画像から膵臓がんの疑いがある部位を検出するAI技術の共同研究を4月1日より行っている。今回、造影剤を用いて対象の臓器を見やすく撮影した画像だけでなく、非造影CT画像からでも、膵臓がんの疑いがある部位を検出するAI技術を確立し、膵臓がん患者の早期発見を支援するという。

約300件の匿名化された造影CT画像・非造影CT画像を用いてAIを学習させることにより――他の臓器との境界が不明瞭かつその中に存在するがんの部位の検出が非常に難しいところで――解剖学的な組織のつながりを考慮して前後の断面画像同士の連続性を推定し、画像内で、連続性の強い領域には前後の断面画像を含めた立体的な解析、弱い領域では平面的な解析を自動的に行う。

そうして膵臓の臓器領域の抽出と、その領域内でがんの疑いがある部位を検出する。AI技術を開発し、臨床現場に適用し、まずは初期の膵臓がんの典型的な所見でありながら発見が難しい腫瘤と膵管拡張の検出のほか、今後、嚢胞や膵臓の局所的な萎縮などの臨床的に経過観察が必要な所見の検出にも取り組み、技術の有効性を検証していく考えだ。