これまでの精神疾患脳画像を用いた機械学習は、主に同一施設・プロトコルにより計測されてきたデータを使用し、新規のデータにおける応用が検討されることはほとんどなかった。臨床現場では新規の対象において、精神病リスクやその発症について早期発見及び鑑別診断が要求されているという。
東京大学大学院総合文化研究科附属進化認知科学研究センター、東大病院精神神経科および放射線科、浜松医科大学精神医学講座の研究グループは、慢性期統合失調症83名、健常対照113名の研究参加者から計測された複数の磁気共鳴画像(MRI)の脳構造画像データセットを用いて機械学習を行い、70%以上を判別可能な機械学習器を開発し、統合失調症早期群、発達障害群における予測可能性を検討した。
結果(論文)、その精度はテストデータセットで75%、独立確認データセットでも76%を維持した。両側淡蒼球と下前頭回三角部は、慢性期統合失調症の分類に重要な特徴量を示した。統合失調症臨床病期群は、発達障害群と比較して慢性期統合失調症として分類された(慢性期統合失調症への分類率:精神病ハイリスク41%、初回エピソード精神病54%、慢性期統合失調症群70%、発達障害群19%、健常者群21%)。
機械学習器の予測情報は、鑑別診断や治療予測などのマーカーとしての応用が見込まれる。既存の脳画像研究成果との整合性も取れていて、機械学習解析を利用したさらなる病態解明も期待されるという。研究グループは今後、多施設共同研究データで得られた脳画像で多疾患についての検証を重ねるほか、一般的な医療機関で計測されるMRIデータへの応用を目指していく考えだ。