世界最高峰スパコンによるAI津波浸水予測をスマホアプリへ

南海トラフ巨大地震は40年以内に90%程度の確率で起こるとされた。それら巨大地震による津波は甚大な被害をもたらすだろう。津波災害から身を守るためには、適切な情報活用に基づく迅速な避難行動が必須である。近ごろスーパーコンピュータの高速化やAI技術の発展によって――

観測に基づくリアルタイムな津波の浸水予測が可能となりつつあるが、それらの情報を市民に広く伝達する仕組みが整備されていない。情報の捉え方やデジタルリテラシーの個人差が社会実装上の課題となっている。AI予測では具体的な情報が得られる一方で、自然現象ゆえに予測が外れることもある。情報を受け取る際には、そのような不確実性を踏まえた情報の理解および利活用が求められる。

と同時に、情報を提供する際には、受け取る側のデジタルリテラシーの違いを考慮したインクルーシブな提供方法を検討する必要があるという。東北大学災害科学国際研究所菅原研究室)、東京大学地震研究所富士通川崎市は、3月12日の川崎区総合防災訓練において、スパコン「富岳」の津波シミュレーションで構築したAIによる高解像度かつリアルタイムな浸水予測データを活用する避難の実証実験を行う。

富士通が開発した専用スマホアプリを通じて、参加者に津波の到達時間や浸水の高さを通知するとともに、同アプリのメッセージ送信機能を使って参加者同士で逃げ遅れている人に避難を呼びかける、地域コミュニティが一体となった安全かつ効率的な避難の有効性を検証する。

4者は、2014年に川崎市と富士通が締結した持続的なまちづくりを目指した包括協定の一環として、17年より「川崎臨海部におけるICT活用による津波被害軽減に向けた共同プロジェクト」を進めている。そして今回、上記スマホアプリによる情報提供の有効性検証を踏まえ、津波浸水予測AIの社会実装に向けた取り組みを進め、より安全な社会づくりに貢献していくという。