一層の普及が見込まれるゲノム医療における活用のため、システム障害や自然災害等によるデータの消失・棄損等に対するバックアップも必要になる。従来、それは情報漏洩リスクを考慮しオフラインメディアを用いて、場合によっては遠隔拠点での保管が行われていたが、メディアの安全な輸送や保管にはコストや時間がかかるため、大容量で機密性の高いデータのバックアップ手法の確立、コスト削減と利便性/可用性の確保が求められていたという。
東芝、ToMMo、東北大学病院、NICTは、内閣府SIP「光・量子を活用した Society 5.0 実現化技術」のもと、量子暗号通信技術と秘密分散技術を組み合わせたデータ分散保管技術を開発し、大規模ゲノム解析データ(約80GB)を複数拠点に分散して安全にバックアップ保管する実証実験に世界で初めて(東芝調べ)成功した。
今回開発した技術は、データの通信および保管の双方にて、情報理論的安全性(理論上、如何なる盗聴攻撃によっても情報が漏洩することは無い)を担保できる。量子暗号通信技術により安全な通信を実現すると同時に、秘密分散技術により、システム障害や自然災害等で保管データの一部が棄損あるいは漏洩しても、元データの機密性は確保され、かつ残った保管データからのデータ復元が達成される。
これにより、長期にわたり機密漏洩やデータ改ざんを防ぐバックアップデータ保管が可能となり、ゲノム研究・ゲノム医療分野における安全なデータ管理への貢献が期待できるという。4者は、上記新技術と実証内容の詳細を、国際会議QCrypt 2021にて発表する。