画像解析・分析が得意なAI(人工知能)を用いて、医療の質の向上や医療従事者の負担軽減などを図るデジタルトランスフォーメーション(DX)が進みつつある。現在、AIを用いた骨折自動検出として、2次元レントゲン画像(単純X線画像)からの手首骨折検出などが提案されている。しかし、数百枚の断層画像からなるCT画像は3次元的であり、骨盤骨折は多様な形状を有しているため、これまでAIが適用できなかったという。
グローリーと兵庫県立大学は19年にAMEC内にグローリー医工学共同研究講座を設け、製鉄記念広畑病院と協同を開始。そして今年6月、同講座のグループは、AIを利用して、CT画像から骨折を自動検出する支援システムを開発したという。93名の骨盤骨折患者のCT画像に対して、骨折の位置、形状をアノテーションし、AIの学習データを作成した。同学習データを用いてAI骨折検出法を提案した。
同技法では、CT画像から、前後左右斜めを含む9方向の断面画像を生成することで、骨折を確認しやすい断面で骨折検出が行われる。同病院の骨折患者93名に含まれる骨折389箇所に対して、AIモデルの学習・評価を行った結果、骨折検出性能は感度が80.5%、適合率が90.7%であった。さらに、骨折を有する患者93名、骨折がない112名の被験者に対して提案法を適用した結果――
すべての骨折患者において100%で1つ以上の骨折を検出、骨折がない被験者においては96.4%で"正しく"骨折がないと判定した。日常診断で非常に有用だという。同講座の研究成果はサイエンティフィック・リポーツに掲載された。