使用済みコンクリートを水とCO2で硬化、永続的リサイクルに道筋

美しい地球と生物多様性を守る、持続可能な社会の実現が切望されている。世界では2015年に国連で採択された17の目標と169のターゲットからなるSDGsの達成が急がれていて、日本は、複数のSDGsに影響する、地球温暖化ガスの排出量を2050年に実質ゼロとする目標を掲げている。

SDGs達成のための「行動の10年」がすでに一年経過した。今月19日、二酸化炭素(CO2)などを資源として位置づけ新たな循環系を提案している、工学院大学の田村雅紀教授は、東京大学の野口貴文教授らとの共同研究により、水とCO2と廃コンクリートだけで完全リサイクルを可能とするカルシウムカーボネートコンクリート(CCC)を製造する基礎技術を開発したことを発表した。

大気中のCO2と、水と、カルシウム(Ca)を含む使用済みコンクリートのみを用いて、砕かれた当該コンクリートの粒子間に炭酸カルシウム(CaCO3)を析出させることにより、コンクリートが硬化する、新たな基礎的製造技術の開発を行った。この手法を用いると、使用済みコンクリートが過去に排出したCO2と最大で同等程度のCO2を固定化できるため、コンクリートはカーボンニュートラルとなる可能性を有している。

薄く大気中に広がって存在しているCO2と、全国各地に存在しているコンクリート構造物中のCaの地産地消的な有効利用が可能になり、建設分野のCO2排出削減に大きく貢献することが期待される。CCCは、何度でもリサイクルできる、完全な資源循環型である。

自立型のカーボンニュートラル化に資する次世代型コンクリートの開発に一歩近づく成果だという。今回の研究は、北海道大学太平洋セメント東京理科大学宇都宮大学清水建設増尾リサイクルの研究者も共同するNEDOムーンショット型研究開発事業「C4S(建設分野の炭酸カルシウム循環システム)研究開発プロジェクト」によるものだ。