野菜の市場価格をAI予測、植物工場の経営効率アップに活かす

ヨーロッパで発展してきた高度な園芸と、日本の高度成長期に確立された大量生産方式とが合わさったようなしくみである。むかしのSF映画に描かれていそうな市街地の植物工場は、21世紀に実用化が進んだ。そして近年、大規模化が図られている。

植物工場から供給する野菜は、露地栽培と異なり天候に影響されない。安定生産が可能であり、狭い耕地で済むことから、近ごろその生産量を著しく伸ばしている。その需要は露地野菜の価格変動に大きく左右されるため、生産した野菜の廃棄や販売の機会損失につながり、企業収益を圧迫することもある。今日のバリューチェーン(価値連鎖)では、効率的な生産を可能とする植物工場本来の特徴を生かせていない。

そこでNEDOは「人工知能技術適用によるスマート社会の実現」に取り組んでいる。植物工場の野菜栽培過程や流通でのビッグデータ収集と、同データとAIを活用した需給マッチングと、これに基づいた栽培物の成長制御や物流等、各プロセスの最適化などによって、バリューチェーン全体を効率化し、上記廃棄や機会ロスを低減することを目指している。

その一環として、AIを活用した野菜の市場価格予測アルゴリズム開発を進めている。ファームシップ豊橋技術科学大学は、東京都中央卸売市場大田市場のレタス価格を月次予測する取り組みのなかで、同アルゴリズムを実証してきた。そして今回、レタスに加えトマト、ミニトマト、イチゴ、ほうれん草、計5品目の市場価格を"週次"で高精度に予測する仕組みを開発。これを無償の予測サービスとして24日に提供開始した。

この度の実証を通じて、NEDOとともに需要予測システムと生育予測や成長制御を統合した生産制御システムの有効性を検証していく。両者は、実証データをもとに「AIによる植物工場等バリューチェーン効率化システム」の研究開発を進める。業界全体の生産性および収益性アップを目標にしているという。