"カイゼン"業務DX、工場全体の映像を解析するシステムを自動設計

スマートファクトリが脚光を浴びる。昨今、深層学習などのAIを使った映像解析は、高性能なGPU(画像演算処理)サーバを用いてすることが主流となっていて、大規模スマート工場においてはそれを多数導入することとなる。

高価なGPUサーバをピーク時に合わせた規模で各現場に設置する必要があり、工場全体に設置した多数のカメラからの映像を解析するには、莫大な機器コストがかかる。解析対象の増減や、作業変更に伴うAIのロジック変更などにより、映像解析の処理負荷がシステムの運用開始後に大きく変動した場合、その構成を容易に変更できない。運用面にも問題があり、大規模な映像解析の実施が困難になっていたという。

富士通研究所は、広大な工場全体にある多数のカメラで取得した大量データを高速解析可能なシステムの自動設計技術を開発した。同技術はローカル5Gを活用してエッジとデータセンタで映像解析処理を連携。各エッジにおける映像処理の負荷変動をデータセンタで吸収し、エッジに設置するサーバ台数を必要最小限に留めるとともに、ピーク時を想定し処理性能を最適化したシステムを自動でデザインする。

一連の映像解析処理を各段階でコンテナ化した。さらに複数コンテナを1GPUで同時実行可能にし、各コンテナでのリアルタイム処理要求度合いに応じたスケジューリングによって、全体のGPU利用の効率化も実現した。今回、組立作業品質の強化を目的とした実験環境で、16台のエッジサーバを用いたシステムを設計し、数秒で作業ミスなどをフィードバックでき、システム全体のコストを最大3分の1に削減できることを確認した。

この技術を用いることで、低コストでリアルタイムな映像解析システムの構築が可能になるという。同社は、22年度内に実用化を目指す同技術を様々な製造現場に展開していくことで、顧客の映像解析によるカイゼン活動を加速し、現場業務のDXを支援していく構えだ。