小脳の学習機能を応用、スマホアプリで認知症リスクの早期発見へ

高齢化が進行している。先進諸国では認知症患者の増加が社会問題となっていて、およそ10年前に「超高齢社会」となった日本においては、2025年までに高齢者(65歳以上)の約20%(約700万人)が認知症になるといわれている。

世界に比類なき速度で高齢化が進行している(参照:厚労省PDF)。この国では、少子化による人手不足を補うため、70歳までの雇用継続を促す施策(高年齢者雇用安定法の改正など)が打ち出されていて、労働者の高齢化は一層進むだろう。このような情勢下で、企業は、高齢者が安心して働ける環境づくりに取り組む。認知症による高齢者の事故など労災リスクを低減するためにも、同環境の整備が急務になっている。

そこで、本人も周囲も気づきにくいMCI(軽度認知障害)の段階で認知機能の低下を捉える、簡易的かつ継続的に利用可能なツールが必要だと考えている。ACCESS金沢大学の米田研究グループ(米田貢研究室および"未来型健康増進医学"米田隆教授)は、小脳のフィードフォワード(予測反応)制御の学習回路に着眼し、早期認知症リスクを簡易に検知するスマートフォン向けサービスの開発に向けた研究を進めている。

同サービスでは、"認知機能チェックアップ"アプリ入りスマホを片手で持ち、その上から水の入ったペットボトルを置き、その際の手の上下の揺れをスマホ内蔵加速度センサーで取得してデータ化し、クラウドで解析した結果を手元のスマホ画面に表示する。スマホさえあれば誰でもいつでも、どこででも手軽に自身の認知機能を確認することを可能にする。

小脳のフィードフォワード制御を認知機能低下の早期発見に応用する研究は世界初(米田研究グループ調べ)。同制御機構+スマートデバイス×データ解析により、ペットボトル等の負荷課題を与えられた人の、人体の挙動データから認知に関わる脳機能を評価する仕組みは日本初であり、特許出願中とのことだ。