心臓がつくる磁場を容易に検出、日常使い各種測定機器の実現に道

約10年前に超高齢化(65歳以上の人口が全人口の21%を占める)社会となった。日本ではその後も高齢化が進んでいて、心臓や脳疾患の早期発見と治療が大きな社会的課題の一つとなっている。

現状では、心臓や脳の精密検査が可能な施設は大病院に限られていて、診察料も高額である。心電図や脳波などの生体信号を電気的に計測する技術は、非侵襲的な機能検査として広く用いられているが、測定対象となる電気的活動が生体内の伝導率の異なる領域を伝播するため、電気が流れる過程で信号が変化してしまう。この問題を解決するものは生体の磁場を測る心磁計と脳磁計だが、これらも極低温を要するなど課題があるという。

東北大学大学院工学研究科のグループは、東北大学大学院医学系研究科のグループ、およびスピンセンシングファクトリーとの共同研究により、ヒトの体内活動から発生する微弱な磁気信号を室温で測定可能な高感度な磁気センサ素子と、外部環境磁場ノイズのキャンセル技術の開発に成功した。この画期的な技術により、日常的生活環境において心臓などの微弱な生体磁気情報を取得可能とする、装置の実現に近づいたという。

空間分解能の高い信号が得られるものの高価で大がかりな設備となる磁気シールドルームを使わずに、日常環境下において、心臓の動きから発生する微弱な磁気信号を検出して、簡便で高精度な測定を達成する――心臓計測の大転換への道筋を示した。今回、強磁性トンネル接合(MTJ)素子を利用して開発したセンサは、室温動作が可能であり、密着型かつ小型という利点がある。

そのうえに広いダイナミックレンジ(数ピコテスラ~数百マイクロテスラ)と高い検出磁場分解能を併せ持つ、新型磁気センサ素子と、これを用いた外部環境磁場ノイズのキャンセル技術の開発が、このたびの成功の鍵になったという。共同研究の成果は、第44回日本磁気学会学術講演会にて発表される。