ものづくりの技能伝承、まずは溶接作業のデータによる可視化から

建設機械の主要部品は、鉄同士を溶接した製缶構造物の比率が高い。その製造現場では、品質の安定化と生産性向上を図るために、溶接ロボットによる自動化が積極的に進められてきた。一方で、人の手による高度な技術が必要とされている。

構造物の用途や負荷条件を踏まえた溶接方法の検討や、強度を保つための仕上げ・補修などの工程では、目視での判断を含め、熟練技術者のわざとノウハウが求められる。建設機械メーカーを含む製造業では今、熟練技能者の高齢化や人手不足などから、若手技能者への技能伝承が課題になっているという。日立建機は、溶接作業のわざを効果的に伝承する、複雑な作業を定量的なデータで見える化する計測技術を開発した。

日立製作所の研究開発グループの協力下、土浦工場と常陸那珂臨港工場の熟練技能者と、国内拠点の若手技能者(約20名)を対象に、溶接作業中の視線、溶接トーチを動かす速度や電流・電圧などの諸条件および溶接部の状態を、複数のカメラやモーションキャプチャを用いて測定し、上記計測技術を実現した。同社は今年度より、この技術を活用し、溶接技能教育のための訓練システム開発に向けた実証実験を開始する。

新たに定めた基準と、若手技能者の溶接作業を比較できる訓練システムにより、若手技能者は、視覚的かつ定量的な情報をもとに自身の改善点を把握できるようになる。そして、教官も若手技能者のデータに基づいて具体的な指導ができるため、双方が同じイメージを共有した上で効果的な訓練を行うことができる。これにより、溶接技能の効果的な習得や、習得レベルの個人差の解消をめざす。

日立建機は、国内外拠点の技能訓練カリキュラムに同システムを取り入れ、人財育成のさらなる充実を図る。製造現場における様々な状況下で計測されたビッグデータを日立グループの「Lumada®」で解析して、グローバルでの製造品質の維持や改善、生産性の向上もめざすという。