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多種類かつ短時間の観測データで河川の水位等を予測する
AI(人工知能)による予測技術が急速に進展している。近年、その中心的な役割を果たしているディープラーニング(深層学習)を時系列データの予測に適用する場合、計算時間やネットワークの設計に要する時間が課題となっている。
現在主流のAIは、ディープラーニングのための膨大なデータを必要としていて、特に自然災害分野では長時間の時系列データの入手が困難であり、少量のデータしか得られない場合の予測精度に課題があった。AIによる予測では、多種類の変数がある場合はどの変数を採用するかによって精度が左右されるため、変数の選択に多大な時間を要してもいたという。
東京大学と構造計画研究所は21日、東大生研および大学院情報理工学系研究科の共同チームが、多種類の変数が混在する短時間の観測データから、力学系理論に基づきターゲットとなる変数を高精度に予測する手法を開発したことを公表した。同手法では、観測データがその背後に存在する決定論的な法則から生成されると仮定し、「埋め込み」という数理的手法によって観測データだけから元の法則の特性を再構成し予測する。
さらに、異なった複数の埋め込みによる予測結果を効果的に組み合わせることで、少量のデータや多種類の変数があるデータにおいても高精度に予測できる。その際、事前に変数選択やネットワークの設計等の作業を行う必要はない――。同手法について、複数の数理モデル、さらに実際の河川水位データに対して予測を行い、その有効性を確認した。
今後は洪水などの自然災害をはじめとして、医学、エネルギー、製造業など幅広い分野への応用に向けて検討を進めていく予定だという。研究の一部は構造計画研究所、JSPS科研費、AMED、JST CRESTの助成を受けたものであり、研究グループの成果は、特許出願の後、英国ネイチャーの総合科学オンライン雑誌「Scientific Reports」に掲載された。