降雨量をAI予測、多目的ダムの運用効率アップへ

河川の流水量を調整する「治水」、そこに貯めた水を農業に適宜利用したり、発電に活用したりする「利水」など、様々な機能を兼ね備えた大規模構造物である多目的ダムは、雨量の観測と、ダムへの流入水量の予測を必須としている。

アメダスなど地上の観測機器による「地上雨量」は、高頻度で正確な降雨量を測れるものの、観測範囲が狭い。他方、気象レーダーによる「レーダ雨量」は広範囲かつ遠方まで観測可能だが、局地的・速報的な降雨量の測定に不向きである。そのため、気象庁では、地上雨量とレーダ雨量のデータを合わせて、1時間の降水量分布を1km四方の細かさで解析した「解析雨量」を作成して、降水短時間予報を行っている。

国交省所管の多目的ダムでも「解析雨量」を算出し、ダム流入水量の予測を行っている。が、解析雨量は、30分おきに過去1時間の雨量から算出されるため、速報性に欠ける(気象庁は10分ごとにデータを更新する速報版解析雨量を表示例)。ゆえに、ダム流入水量に誤差を生じることがあったという。

DeNA、日本工営、長岡技術科学大学、長岡工業高等専門学校は、多目的ダムにおける利水運用の効率化のための研究を行っていて、今月10日、AI(人工知能)技術を活用した予測方法において、解析雨量を正確な値と見立て、レーダ雨量データを画像解析技術で補正することで、広範囲かつ正確な降雨量データ(解析雨量と同程度の正確値)を、5分単位で求められたことを発表した。

今回の手法により、多目的ダムでは将来的に増電効果が見込めることが分かったという。DeNAは、AI画像解析技術を活用し、広範囲かつ高頻度で降雨量を予測して現在活用しているデータの精度を高めることでダム運用の効率化に貢献していく構えであり、4者の研究は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)に委託された「IoTを活用した新産業モデル創出基盤整備事業」の1つであるとのことだ。