超高齢化時代をゆく日本では、およそ5年後に認知症有病者が5人に1人になると推計されている。別の算出値をみれば、'01年~'13年に平均寿命が男性2.14年、女性1.68年延びた一方、日常生活に制限のない「健康寿命」の延びはそれぞれ、1.79年と1.56年に留まっている。
平成29年度高齢化白書(概要版)の第2節3「高齢者の健康・福祉」にそんな現状が示されていて、今後増加する認知症患者や患者家族への支援、早期発見のための体制整備など、認知症患者を受け入れる環境の構築が急務になっていることがわかる。8月、人口26万人超の兵庫県加古川市と、ALSOK、NTT西日本、ジョージ・アンド・ショーンは、「健康寿命延伸サービス」の実証実験を開始する。
情報通信技術(ICT)を活用したまちづくりの推進を行っている同市は、ALSOKとともにこれまで官民連携ICTによる「見守りサービス」等を通じて、安全・安心を実現するスマートシティプロジェクトを進めてきた。また、NTT西日本とジョージ・アンド・ショーンは、ICTを活用し、周囲に異変が気づかれにくい認知症の前段階――軽度認知障害(MCI)の検知エンジンを開発し、認知症患者数の増加を抑制する取り組みを続けてきたという。
4者は今回、社会課題である認知症に因る高齢者の行方不明事案などを解決するために、ICTと人工知能(AI)を活用した新しい見守りサービスの検討を目的に、加古川市内において、一般戸建て住宅もしくは集合住宅に暮らす65歳以上の人を対象に、見守りサービスで得られるデータをヘルスケア等の他分野へ応用し、健康寿命の延伸に寄与するしくみを実証する。
MCI検知エンジンに、見守りサービスで蓄積してきた位置情報等のデータベースを活用させることで、社会保険費削減にもつながる新たなスマートシティサービスの開発に向けた実験を来年3月(予定)まで行っていくという。