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スーパーエルニーニョよりもモンスーントラフが台風の数に影響する
南米ペルー沖、赤道付近で海水温の高い状態が続き発生する、エルニーニョ現象が世界の気候を変動させる。ニュース番組等で誰もが聞いたことがあるだろうその現象において、極端な高温偏差を示す(振幅が大きい)ものをスーパーエルニーニョと呼ぶそうだ。
スーパーエルニーニョは、1997年と2015年に起こっていた。両年において、北西太平洋で強い台風が多く発生した理由を探るため、高解像度の大メンバーアンサンブル季節スケール数値シミュレーションを実施したという。JAMSTECの雲解像モデル開発応用グループと、東京大学大気海洋研究所の共同研究チームは、台風の季節予測に向けた大気の内部変動の予測の重要性を指摘する。
同研究チームは、全球雲システム解像大気モデル「NICAM」を用いて、スーパーエルニーニョ現象が発生し強い台風(中心気圧945ヘクトパスカル以下)の発生数が多かった両年の夏季を対象に大アンサンブル実験を実行した。結果、スーパーエルニーニョが発生しても北西太平洋で強い台風が多く発生するとは限らず、モンスーントラフ(北西太平洋域の熱帯収束帯)等の大気の内部変動も影響することがわかった。
強い台風が有意に増加した'97年の実験のアンサンブル平均では、モンスーントラフに伴う西風が強い傾向がシミュレートされていた。一方、変化の見られなかった'15年のそれでは、西風が弱い傾向が見られた――これはモンスーントラフの強さがメンバー間で大きく変動していたためで、モンスーンの強さと強い台風の数の間には有意な相関がある。モンスーントラフの強さの再現が強い台風の予測に重要であることを意味しているという。
今回の研究は、文部科学省によるポスト「京」(スパコン「富岳」)の重点課題4「観測ビッグデータを活用した気象と地球環境の予測の高度化」の支援を受け実施。成果は米専門誌ジオフィジカル・リサーチ・レター電子版に掲載された。