産業分野などで人をも含むIoT(モノのインターネット)が進展している。昨今、それは自動運転等の新たなしくみの実現でも重要視されていて、様々なセンサから多くの時系列データが得られるようになっている。
センサデータの特徴からモノの動作の意味をAIが判断する、機能を開発すればスマホや各種機器に人や機械の見守りなど高度な能力が備えられる。動作の瞬間値を記録した時系列データにAIを適用するには、学習用のラベル付き教師データを作成する必要がある。たとえばランニングの際、加速度センサのデータには複数の状態が混在していて、これらをAIに学習させるには――
データを区間に切り分けて、「走っている」「歩いている」「止まっている」といったラベルを付与した教師データを作る。データ測定中に人の振る舞いを録画しておき、秒単位で変化する数値と挙動を照合して、ラベルを付与していくのだが、この人力作業は工数が膨大であるため、時系列データのAIへの適用が進まず、ラベル付与作業の手間を削減する自動化技術が求められていたという。
富士通研究所と熊本大学は、加速度センサやジャイロセンサなどの時系列データにおいて、教師データを簡単に作成できる技術を開発した。同技術では、複数動作を含むような長い区間ごとに、その区間での主要動作と判断された1つのラベルを手動で付与していくだけで、学習済みニューラルネットワークが推定ラベルを出力しその寄与度を計算、各動作ごとに適切なラベルが付与された高精度な教師データを自動作成できる。
同じ動作が継続している時の特徴と動作が変化する時の特徴を学習し、同じ特徴を持つ動作の時間帯を適切に自動抽出することが可能となる。研磨作業を模した動作の時系列データにラベルを付与する実験では、92%の時間帯で正しくラベル付けができたという。今回の技術は「Zinrai」の前処理用として今年度中に実用化される見込みだ。