農業IoT、"感じて考える首輪"で牛の行動観察

人間にとって有用な動物を飼い育てる農業。畜産では近年、動物利用を認めつつもその苦痛を可能な限り排除する「アニマルウェルフェア」が国際的に意識されている。直訳すれば健康で快適な生活がおくれる「動物の幸福」、それを実現する取り組みがホテル・外食産業等でも始まっている。

国連の持続可能な開発目標(SDGs)に沿って、日本では消費者教育の推進に関する法律の下、消費者庁で「倫理的消費(エシニカル消費)」が議論され、その普及と啓発が進められている。現在、オリンピックでの食材調達コード(畜産物)にアニマルウェルフェアが示されている。さらに地球上の自然、里山、社会、人にある「サイレントボイス」を統合的データとして顕在化するサイクルの実現も必要だという。

東京工業大学信州大学ISIDの共同プロジェクトチームは、東工大COI『サイレントボイスとの共感』地球インクルーシブセンシング研究拠点にて、最先端エッジAI技術を活用した牛の行動観察システムを開発。その'21年社会実装を目指し、信大農学部で今年4月~来年3月に実証実験を行う。実験では、「感じて考える首輪」を用いてエッジデバイスとクラウドのAI処理量と通信量のバランスを最適化する。

牛の動きを加速度センサで測定してBluetooth送信するだけであった従来の仕組みでは、放牧地での通信距離、クラウド通信コスト、デバイスの消費電力にまつわる様々な問題があり、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」時代に牛の行動推定を適切にできるものではなかったという。同チームは今回、ソニーのボードコンピュータ「SPRESENSE™」を搭載した首輪に、牛行動AI分析アルゴリズムを組み込んでいる。

エッジAIで推定した牛の状態データに加え、牧場内の様々な環境データを「FACERE®」に収集。総合的なアニマルウェルフェアは、全データを集約したクラウドAIで推定するという。