時空を超えて体験を共有する、トレーニングにXRという選択肢が

科学技術の底力がありながら人手不足、少子高齢化といった大問題を抱える日本では、その第5期基本計画において、サイバー空間と現実のフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより経済発展と、社会的課題の解決を両立する人間中心の未来社会が示された。

「超スマート社会(Society5.0)」では、あらゆるモノがネットにつながり、人工知能やロボットが生産性の向上や介護等で人間を補佐する。離島や山間部での物流、被災地などへの医薬品及び物資輸送はドローンが担い、交通弱者のいる地域では自動運転車が活躍する。ところではて、人間同士の技術伝承、指導や研修のしくみはどうなるのだろうか――。

3月19日、凸版印刷TISは、XR(仮想現実VR+拡張現実AR)を使い、時間と場所を超えて説明や指導を可能にする技術(紹介動画YouTube)を共同開発したと発表した。両社は、少子高齢化や後継者不足といった社会課題の解決に取り組んでいて、今回の技術(特許出願中)は、遠く離れた場所にいる人物が、あたかも同じ空間内に存在しているかのような状況を作り出し、コミュニケーションを可能にするものだという。

従来、VR空間を使った遠隔共有技術では、実作業を行う場合にヘッドマウントディスプレイを外す必要があり、VR空間とフィジカル空間の行き来に煩雑さが発生していた。一方、AR空間を使った遠隔共有では、各々の実在場所の違いが作業に差異を発生させてしまう問題を引き起こしていた。これらの問題を解決し、遠隔地間をVRとARを用いてシームレスにつなぐ機能を有するものにしたという。

新技術では、空間マッチング、AR表示とVR操作、相互に情報連動するXR技術などにより、音声・モーションをリアルタイム共有するとともに、共有情報を記録・蓄積して再活用することもできる。技術の社会実装に向けて両社は、産
官学を交え更なる改良・実証を進めていく構えだ。