オフィス環境にも設置できるアンテナ評価環境の「コンパクトアンテナテストレンジ」

東陽テクニカは、アンテナおよびRCS(レーダー反射断面積)測定ソリューションのリーディングメーカーである、Antenna Systems Solutionsと、国内総代理店および米国・中国における販売代理店契約を締結した。

第一弾として、オフィス環境にも設置できるアンテナ評価環境の「コンパクトアンテナテストレンジ」を販売開始した。これは、パラボラ反射鏡とフィードアンテナを配置した小型の電波暗箱で、5Gデバイスや基地局のメーカーが従来、長い距離の測定空間(テストゾーン)を要し実施していたMassive MIMO機能を持つ5Gデバイスのアンテナ評価を、数メートルの省スペースで実現するものだ。

Massive MIMOとは、複数のアンテナを使用してデータ送受信を行う無線通信技術の MIMO を発展させ、非常に多くのユーザ数で送受信することを可能にした空間分離技術。特にアンテナをアレー化し、ビームの向きを変化させることによって実現する。

コンパクトアンテナテストレンジのベースとなる技術は、1970年代後半にコンパクトレンジとして登場。従来コンパクトレンジは、火器管制レーダーや人工衛星搭載アンテナの開発評価などに使用される宇宙衛星・防衛用アンテナ専用の測定環境だった。2018年4月に3GPPによって発行された5G規格の一つである「TR38.810」で、Indirect Far Field(非直接遠方界)法の環境として採用されたことを契機に、2018年からアンテナ評価にも適した環境として注目を集めている。

ただ、5Gの高速通信に必要なMassive MIMO技術で使用される指向性の強い大口径アンテナの評価に適した環境を構築する場合、100メートル以上の距離が必要で、屋外のテストサイトなどの環境で実施しなければならない。距離が伸びるほど測定セットアップが煩雑になり、さらに屋外でのテストは天候や周辺環境への配慮も必要であるため、評価には多くの時間とコストがかかるという課題がある。

コンパクトアンテナテストレンジは、電波暗箱にパラボラ反射鏡を設置することで球面波を平面波に変換し、従来100メートル以上を要した環境を数メートルで作り出すことができる、低コストで省スペースな評価環境。テストゾーンが短距離になることで評価前の準備・調整も簡単になり、オフィス環境などアクセスの良い場所に設置すれば、すぐに5Gデバイスのアンテナ評価を実施できる。また、環境がコントロールされた室内で試験を実施するため、再現性の高い測定が可能だ。

コンパクトアンテナテストレンジの販売価格は、5,000万円(税別)から。