交通渋滞や少子高齢化など、実社会における複雑な課題を解くためには膨大な計算を要する。そしてその大部分が組合せ最適化問題の計算でり、これを従来のノイマン型コンピュータで行えば、最適化パラメータ数の増加につれて、計算時間や消費エネルギーが飛躍的に増大してしまう。
そのため日立では、組合せ最適化問題を実用的な時間内にて、高いエネルギー効率で解ける新しい動作原理(非ノイマン型)のコンピュータ開発に取り組んできた。'15年2月には磁性体の性質(スピン)を用いたイジングモデルの動作を半導体回路で再現した、CMOSアニーリングマシンの開発に成功し、'16年11月にはFPGA(プログラマブル集積回路)を用いた試作機により、計算規模を向上する技術を開発した。
さらに昨年6月、CMOSアニーリングチップ(FPGA)を25枚接続することにより世界最大規模の102,400パラメータの問題に対応できるようになり、この先端技術をNEDOとともに9月からクラウドサービスとして提供している。同社は今月19日、CMOSアニーリングマシンを名刺サイズへ高集積化するとともに高速化を図り、エネルギー効率を大幅に高めることにも成功したと発表した。
約6万パラメータの組合せ最適化問題の計算を従来型コンピュータの約2万倍高速に行え、エネルギー効率においては約17万倍に向上した。同マシンは、組合せ最適化問題の計算をスマートフォン、カメラ、センサなどのIoT機器でリアルタイムに行うエッジ処理への適用可能性を見据えている。今回の成果の一部は、NEDOの委託業務として得られたものであり、半導体回路の国際会議「ISSCC 2019」にて発表されるという。
同社は今後、産学連携による協創やオープンイノベーションを通じて、CMOSアニーリングマシンの普及を図り、複雑な社会課題の解決や政府が推す超スマート社会の実現に貢献していく構えだ。