5Gの先を行く、超高速ワンチップトランシーバが現実に

世界は今、次世代移動通信規格(5G)の実用化を控えて、様々な技術革新に期待している。車や家電をはじめとしたモノのインターネット(IoT)、遠隔医療、AI・ロボットを活用する生産・物流現場などでは、その高速性や大容量、同時接続性や超低遅延といった特長が活きる。

2時間の映画を3秒でダウンロード可能な5Gにより、高精細なサッカー中継動画などを多数の人がスマホで同時視聴できる。そして5Gの次の世代、「ビヨンド5G」時代には――。さらに新たなサービス、社会インフラやビジネスモデルなどが展開され、それとともにデータ伝送設備やモバイル機器の小型化が、改めて課題になると考えられる。

今月19日、広島大学NICTパナソニックは共同で、量産性に優れたシリコンCMOS集積回路により300GHz帯を用いて毎秒80ギガビットのデータ伝送を可能にするワンチップトランシーバの開発に世界で初めて成功したと発表した。従来に比べデータ伝送速度を大幅に向上させるとともに「ワンチップ化」を達成したことで、300GHz帯無線通信の実用化がより近づいたという。

たとえば地上と宇宙船間でのリアルタイム医療などへの適用が期待される。300GHz帯を含むテラヘルツ帯の無線通信では、'17年にIEEE Std 802.15.3dにより252~325GHz帯域のチャネル割当が示された。そして上記3者の研究グループは、その中のチャネル66を用いて80Gb/sの通信速度を実現するワンチップトランシーバを開発した。

情報通信インフラ用の光ファイバに匹敵する毎秒テラビットの通信能力を、一般ユーザが利用可能なほど安価に実現できる可能性を示した。今回の研究は、総務省「テラヘルツ波デバイス基盤技術の研究開発」(Word形式資料)の一環で行われたものであり、成果は半導体回路の国際会議「ISSCC 2019」にて発表され、伝送実験デモも行われる。