エコーによる血管内カテーテル治療、新技術で時間短縮と低被ばく化へ

動脈硬化や糖尿病などが原因で発症する血管狭窄の治療では、患者の負担を少なくするため、従来の外科手術(バイパス手術)に代えて、血管内の閉塞部を広げるカテーテル治療のニーズが高まっている。

現在、同治療は、血管内の病変とカテーテル先端の位置をX線によりモニターしながら行うことが主流であり、完全閉塞病変などの検出が難しく、被ばくを伴う――。これらの課題を解決するため、X線撮影の一部を超音波診断装置(エコー)撮影で代替したカテーテル治療も行われているが、エコーでモニターできる範囲は数cm四方程度と狭く、体内に挿入されているカテーテル(ガイドワイヤー等)先端位置の検出が容易ではなかったという。

日立製作所は、カテーテル治療の時間短縮と低被ばく化に向け、小型の超音波発信機を用いて血管内のカテーテル先端位置を検出する基礎技術を開発した。成果を米国「SPIE Photonics West」イベントにて発表する。同技術では、ガイドワイヤー先端に取り付け可能な小型の超音波発信機と、エコーにより超音波発信機の位置をリアルタイムに検出する。

「治療用の細径ガイドワイヤー先端に取り付け可能な小型の超音波発信機」、「ガイドワイヤー先端位置を広範囲(10 cm立方程度)でリアルタイムに検出可能な信号検出アルゴリズム」といった特長を備えている。今回の基礎技術は、大阪大学の協力のもとイヌの腹部大動脈を対象として検証。結果、生体内でカテーテル先端位置を良好に検出できることを確認した。

X線では検出が難しかった病変(造影剤が通らす血管が視認できない)にも対応が容易となり、治療時間短縮と低被ばく化が期待されるという。日立は今後、動脈硬化や糖尿病などによる下肢血管疾患を対象として、現場の医師や医療機関、カテーテルを取り扱う医療機器メーカーなどと連携した研究を進め、患者負担の少ないカテーテル治療の実現をめざしていく構えだ。