2,000件の匿名カルテから精度85%の術後感染予測モデルを構築

細菌やウイルス、寄生虫などの感染によっておこる病気、感染症は危険である。同じ施設を利用する多くの患者の生命に脅威をもたらす可能性があり、これを防ぐことはすべての病院・医療機関にとって重要課題である。


手術では、術後感染症リスクの低下を目的とした抗菌薬の予防的投与が有効だ。が、多量投与は薬剤費への影響が大きく、耐性菌が発生・増殖するリスクを高くする。耐性菌による死亡者数は外国文献(PDF)によれば世界で年間70万人にのぼり、'50年には1,000万人――。ゆえに日本政府は薬剤耐性(AMR)対策アクションプランの策定、抗菌薬適正使用支援に対する'18年度診療報酬化(参考資料)などを行っている。


そのうえで、適切な患者に適切な薬を適切な量、適切な期間投与することが重要だという。新潟大学とNECソリューションイノベータは、AI(人工知能)を活用し、消化器外科患者の手術後感染(術後から退院までの期間内で細菌検査の結果が陽性)を予測するモデルの検証を行ったと1月22日公表した。

同検証では最先端AI技術群「NEC the WISE」の1つ、「異種混合学習技術」を活用していて、新潟大学医歯学総合病院の消化器外科手術で'13年~'17年に入退院した患者約2,000人の電子カルテデータを匿名化して用いたという。結果、判断及び分類精度の良さを表す指標AUC(中央値0.5)で0.85すなわち確率85%を達成する術後感染予測モデルを構築した。

さらに手術後の感染に関係する年齢、BMI、使用薬剤、手術時間などの因子が可視化されたという。両者は、今回の検証結果を踏まえて、構築した予測モデルを活用し、入院から手術終了までの電子カルテデータより手術後感染患者の早期予測を支援――。今後も、医療現場の様々な課題にAI活用で応え、新たな価値を創造し、安全・安心な医療現場の実現や医療の発展への貢献をめざす構えだ。