オーロラを利用し、波動粒子相互作用の詳細を世界で初めて明らかに

極地方の空に出現する。淡い赤緑ないし白色光の帯やカーテンは「オーロラ」と呼ばれ、宇宙空間においてそれは電磁波を介してプラズマ(帯電粒子)が一層高いエネルギーへの加速あるいは散乱によって生じるものであり、関連情報が磁力線を通じて聞こえる。


磁力線に沿った電子のらせん運動に伴う電磁波のうち、音声変換すれば鳥のさえずりのようになるものを「電磁波コーラス」という。コーラス波動と電子が引き起こす物理現象(波動粒子相互作用)は、人工衛星の故障や宇宙飛行士の被ばくなどにつながる有害な放射線を発生させる。高エネルギー電子を地球上に降下させ、この星の大気組成に変化をもたらす可能性も示唆されている。

が、その現象は目視できず、その形状変化の詳細は半世紀を越えてなお不明のままだという。金沢大学、名古屋大学、電気通信大学、NIPR、京都大学、東北大学、ISASNICTなどの国際共同研究グループは、地上で観測されるオーロラを使い、地球近傍の宇宙で発生する電磁波コーラスと高エネルギー電子が共鳴して起こる波動粒子相互作用の形状変化の詳細を世界で初めて明らかにした。

コーラス波動が高エネルギー電子を大気中へ降下させる際に特殊なオーロラを発光させることに着目し、地球周辺の放射線を調査する衛星「あらせ」地上観測網PWINGとの協調観測を行った。結果、あらせが地球から約3万km離れたところでコーラス波動を捉えたとき、このコーラス波動に伴う突発発光オーロラをアラスカ南部ガコナで捉え、上記現象の発生域が数10ms単位で(地磁気的)南北へ非対称に発達することを突き止めた。

オーロラが宇宙電磁環境のディスプレイに成りうることを示した。今後オーロラを用いた宇宙電磁環境ハザードマップを作成することにより、安心安全な宇宙利用拡大に貢献することが期待される。研究成果は英国科学誌「ネイチャーコミュニケーションズ」電子版に掲載された。