世界初!1波長で587Gbps長距離データ転送を商用環境で記録

あらゆるモノがネットにつながる「IoT」が各種産業・医療・社会インフラ分野に広がりつつある。日本では現在、第5世代移動体通信システム(5G)の実用化を目前にしていて、超高精細動画(4K8K)のインターネットプロトコル(IP)放送なども検討されている。
近未来のコネクテッドカーもIoTの一環であり、これらのしくみで収集されるビッグデータは増大の一途――。一方、最先端の学術研究では、実験装置の大型化・高性能化、ハイパフォーマンスコンピュータ(HPC)によるシミュレーションなどの進展もあり、扱うデータ量が爆発的に増加している。そこで、国立情報学研究所(NII)は、全都道府県や日米間を100Gbps回線で結ぶ学術情報ネットワークSINET5を'16年4月から運用している。

素粒子物理学、核融合学、天文学などの先端科学技術分野では、国内外に設置された大型実験装置などで大量データが生み出されていて、それを各研究機関に転送し分析を行っている。同ネットワークでは現在、研究機関間の活発なデータ転送で100Gbps(ギガビットパーセカンド)回線を使い切るなど需要が急増していて、100Gbps超に向けた更なる高速化対応が望まれているという。

NIIは、NTT東日本、NTTとともに今年11月、東京都と千葉県に実証実験用として1波600Gbpsの伝送環境を構築し、そのフルスループット(伝送路で送受信可能な最大データ量)の確認、その上での汎用サーバを用いた587Gbpsデータ転送の実現、光波長変更と伝送レート変更による伝送経路変更実験に成功した。

NTTグループは、そのビジネスの周囲でビッグデータや映像データの流通拡大、クラウド技術の進展に伴う基幹光ネットワークにおけるトラフィックの急激な増大が続いていて、これらに対応するため、次世代の基幹光ネットワークについて、継続的な研究開発・設備導入を進めてきたという。

3者による今回の実験では、商用環境に1波長600Gbpsにおいて世界最長となる約102kmの伝送環境を構築し、データ転送にはNIIが開発したファイル転送プロトコル「MMCFTP」(大規模多重接続ファイル転送プロトコル)を用い、サーバ1台での世界最速587Gbpsのデータ転送速度を記録。また光ネットワークの高信頼化に向けた伝送経路切り替えでは、伝送距離を考慮し、光波長の変更に加え600Gbpsから400Gbpsへの伝送レート変更を行い、円滑な経路切り替えを実現した。

'16年の370Gbpsデータ転送実験成功に続く快挙となった。40TByte(25GBブルーレイディスク1,600枚分)を約9分間で転送完了させることに成功した、この度の実験の一部は、総務省の委託研究「巨大データ流通を支える次世代光ネットワーク技術の研究開発」(同省WebサイトPDF)により得られたデジタルコヒーレント光伝送技術を利用しているとのことだ。