飲みやすさ、心地良さなどを"科学する"食品開発に向けて

食品は、咀嚼から嚥下に至る過程で、粉砕され唾液と混和されて物性が変わる。刻一刻と変化する食品の物性は、口腔から咽頭(のど)の粘膜で知覚され、感覚情報として大脳に伝えられている。


すなわち、食品の飲み込みやすさには、食品の物性だけでなく、口腔から咽頭のトライボロジー(摩擦・潤滑)特性が関係している。がしかし、これまで嚥下時のトライボロジー特性を考慮した食品物性の計測装置は開発されておらず、トライボロジー特性を考慮した食品の計測値(物理量)と官能評価値との関係を明らかにした研究はなかったという。

武蔵野赤十字病院と、「明日をもっとおいしく」する明治は、口腔から咽頭のトライボロジー特性を考慮した新しい計測装置「F-bology Analyzer®」を開発し、食品の計測値と、実際に飲み込んだときの官能評価値との間に相関を確認した。

各種センサーと高速度カメラを用いて、模擬粘膜シート上に流した流動性を有する食品の「広がり度合い」「流れる速さ」「厚み」などさまざまな動的特性を計測することができる。模擬シートの表面性状は、口腔や咽頭の摩擦や潤滑度(乾燥度)に応じて可変可能であり、「口が渇いた状態」も再現できるようになっている。

F-bology Analyzer®の計測値(物理量)とドリンクヨーグルト嚥下時の官能評価値との比較では、「広がり度合い」「流れる速さ」「厚み」などに相関傾向が見られた。ゆえに同装置の計測値は、飲み込みやすさについての新しい評価指標となりうることが示唆されたという。研究成果は「第24回日本摂食嚥下リハビリテーション学会」にて発表された。

今回独自開発した装置を活用して、明治はこれから、飲みやすい食感、心地よい食感などを評価するための新しい指標(物理量)を提案するとともに、より価値が高い食品の設計と開発、多様な食シーンや個人向けのテーラーメイド食品も実現していく考えだ。