DXへの取り組み、海外との差が浮き彫りに IDC調査
調査は2018年5~6月に、DXに取り組んでいる企業に勤務する国内および世界のビジネスリーダーに対して行われたもので、サンプルサイズは国内が150、国内を含めた世界が1,987。調査内容は、DXの進捗状況、推進組織/体制/課題、KPI設定など多岐にわたっている。
このうちDXと企業戦略との連携について聞いた質問では、国内企業の実に98.7%が何らかの形で両者の連携を保っていることが分かった。連携の仕方については、部分的/短期的な連携にとどまっているとする回答比率が、全体的/長期的な連携を保っているとした回答を上回ったが、他社に比べてDXの取り組みが進んでいると考えている企業では、DXと企業戦略がより全体的/長期的な形で結び付いている傾向が見られる。DXの先進企業では、DXとビジネスが一体化していることがわかる結果となったと同社は分析する。
また、国内企業がDXを進める際に優先事項としていることを聞いた質問に対しては、「データの資本化/収益化」が52.7%と最も高くなった。昨今、ビッグデータやAI(人工知能)といったデータ活用のための技術が大きな進歩を見せていること、それに伴い企業間でデータを中心とした提携の動きが広がっていることなどを背景に、「DXとはデータを活用したビジネスを行うこと」という認識が広まりつつあることが垣間見える結果となった。
一方、これらの結果は世界の調査結果とは若干異なる傾向が見られることも分かった。例えば、「DXを進める際の優先事項」についての回答比率では、世界の企業は、業務の卓越性や顧客体験への回答も、データの資本化/収益化と同等かそれを上回る結果となり、DX実施の目的の多様化がうかがえる。
また、DXのKPIの利用方法を聞いた質問では、国内企業が主に従業員の動機づけや社内外への公開といったハイレベルなものにとどまっている一方、世界の企業では四半期ごとや月ごとの業績レビューに使うといった回答が多く、DXを日々の業務と連動させる傾向が強いことが分かった。
国内企業のDXへの取り組みは進んでいると考えられるものの、世界の企業の動向と比べると取り組みの優先事項が特定の領域に偏る、DXと企業戦略とは連携しているものの実際のオペレーションとの関連性が弱い(DXと日常業務とが連携していない)といった傾向も見られる。
これらのことは、DXが一時的な流行で終わってしまい、真に国内企業の変革に結びつかない結果を招く可能性もはらんでいる。IDC Japan リサーチバイスプレジデントの寄藤 幸治氏は「『課題先進国』といわれる日本の企業はDXを真剣にとらえ、その成否が今後の企業の成長だけでなく生き残りすらを大きく左右するものと考えなくてはならない。そのためには、企業戦略、事業戦略/戦術、日々の業務など企業のあらゆる活動の中にDXが埋め込まれているような体制を構築していくべきである」と述べている。