超並列デジタルバイオ計測を実現、早期疾患診断などに期待

科学技術振興機構(JST)は、標的物質の濃度勾配を形成するための機構を実装したマイクロ流路を内蔵するチップを新規に開発し、デジタルバイオ計測の超並列化を実現することに成功した。

JST戦略的創造研究推進事業において、東京大学 大学院工学系研究科の渡邉 力也講師、同大学院薬学系研究科の小松 徹特任助教の研究グループが成功した。研究成果は、2018年8月9日(英国時間)に英国科学雑誌『Lab on a Chip』電子版で公開された。

デジタルバイオ計測は、数万個以上の微小な試験管を集積したマイクロチップを利用して、単一の生体分子から機能や物性を計測する手法。高い感度と高い定量性を実現しているのが特徴だ。近年では、遺伝子診断や血液検査のための分析装置の技術基盤として活用されており、創薬・医療分野での産業応用への道筋が開拓されつつある。

しかし、計測のハイスループット化において技術的に大きな問題があり、現状では、デジタルバイオ計測に利用するマイクロチップは試験管が集積化しているが、試験管を並列利用することができず、計測のスループットを向上させることが極めて困難だった。

今回、研究グループは、デジタルバイオ計測の並列化を実現するため、標的物質の濃度勾配を形成する機構をマイクロチップへ実装し、チップ上の各試験管に対して、異なる組成の溶液を数秒間で封入する技術を確立した。現在までに1枚のチップを用いて、異なる溶液環境下でのデジタルバイオ計測を実現し、従来不可能であった試験管の並列利用による「デジタルバイオ計測のハイスループット化」に成功したという。

研究グループによると、今回開発されたマイクロチップ技術は、従来のデジタルバイオ計測の汎用性を大きく拡張するものであり、創薬候補物質の探索や早期疾患診断などに向けた実用化への道筋を拓くものと期待されると説明する。