「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」と尋ねられたらどう答えるのだろうか。20世紀半ばに上梓されたその小説はハリソン・フォード主演で映画化され、昨年『ブレードランナー2』として続編も公開された。日本で開発が進むロボットは、映画に登場するアンドロイドを目指しているようで興味深い。
近ごろ対話ロボットの研究開発が盛んになりつつあるが、従来のロボットでは、人間同士の間で得られる対話感や存在感、社会性を感じることができないという。京都大学、大阪大学の教授らは、JST戦略的創造研究推進事業のERATO石黒共生ヒューマンロボットインタラクションプロジェクトにおいて、マルチモーダル対話制御システムとマルチロボット対話制御システムを開発し、人間らしい存在感や対話感を相手に与えるロボットを実現した。
研究グループは、カメラ(視覚)やマイクロフォンアレイ(聴覚)を用いたマルチモーダル(多重様式の)認識システムや、意図や欲求に基づく対話制御システムにより、アンドロイド「エリカ」の日常的な状況における人間らしい存在感を向上させたうえに、自然で多様な相づち生成や焦点語に基づく聞き返し技術により人間らしい対話感を実現し、アンドロイドが傾聴や面接を行える可能性を示した。
対話感を演出する社会的対話ロボット「コミュー」の研究では、ロボット同士の掛け合いや役割交代をさせるなど、複数のロボットの発話や非言語的表現の表出タイミングを制御するマルチロボット対話制御システムを開発。ロボット同士の対話を人間に見せることで、ロボットが人間の発言や意図を認識できない場合でも、対話相手である人間に強い対話感を与えることを実現した。
さらに、移動を伴う人間との親和性を追求し、車輪移動機構を持つ子供型アンドロイド「イブキ」も開発したという。研究成果は8月1日、「第二回 ERATO石黒共生HRIプロジェクトシンポジウム」にて発表された。